カレッジマネジメント208号
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14「地元の高校生が来てくれないのに、全国から来てくれるわけがない。」ある教員が言ったこの一言が、恐らくはその後の本学の方向性を決めたのだった。大学とは、全国から学生を集め、そして社会全体を牽引する人材を東京をはじめとする全国に送り出すものだ、と思い込んでいたわれわれの目から鱗が落ちた瞬間だったのかもしれない。1888年(明治21年)に設立された群馬県最古の私学である共愛学園が、創立110周年を記念し、前身の短期大学を改組して1999年に開学した「共愛学園前橋国際大学」は、まだ新設大学である。入学者の8割以上が群馬県出身、就職する学生の8割前後が群馬県内に就職する「地域からお預かりして、地域にお返しをする」ことが使命の地方大学であり、1学部1学科(国際社会学部・国際社会学科)で入学定員が225名(2018年度から255名)の小規模大学でもある。このように、本学は地方・小規模・新設という一般にはデメリットと言われる要素を全て持ち合わせた大学である。案の定、開学直後に定員割れを起こす。冒頭の教員の発言は、その頃の議論の中で発せられたものだった。しかし、間もなく受験者数は増加に転じ、入試難易度も10年間で10ポイントほど上昇している(図表1)。現在では、全国の大学から視察に訪れていただき、セミナー等での事例報告の依頼も頻繁にいただくまでになった。朝日新聞出版の『大学ランキング2018』「学長からの評価」において、教育面で全国5位、総合で14位にランキングされるなど、各方面で注目もされている。地方・小規模・新設は本当にデメリットなのだろうか。この3要素をメリットに転換してきたと自負する本学の取り組みとその背景にある本学の姿勢や独特の文化をご紹介したい。本学は、スーパーグローバル大学等事業の「経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援(GGJ)」に選ばれた全国42大学の1つであり、同時に、「大学教育再生加速プロジェクト(AP)」、「地(知)の拠点整備事業(COC)」、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」の拠点にも選ばれている。こうした事業を一体的に展開する教育プログラムの総称を「KYOAI GLOCAL PROJECT」としているのだ。①地学一体で育む飛び立たないグローバル人材大学のグローバル化といえば一般的には海外大学との連携協定に動くが、本学はまず地域連携のスキームを組んだ。伊勢崎市教育委員会と伊勢崎市のサンデンホールディングス株式会社と共に、私達が目指したのは「次世代の地域社会を牽引するグローカルリーダー」、いわば「飛び立たないグローバル人材」の育成だった。例えば、伊勢崎市教育委員会と実施する「海外研修サポートインターン」は、中学生の海外研修を事前指導からサポートするプログラム。「ミッションコンプリート研修」は、タイにあるサンデンHDの現地法人にて、社長からビジネスミッションを与えられ、制限時間内にコンプリートするという過酷な研修。言葉が通じないアウェイの地で、与えられた課題の解決を試行錯誤し、行動していく。KYOAI GLOCAL PROJECTリクルート カレッジマネジメント208 / Jan. - Feb. 2018小さくても強い大学の創り方共愛学園前橋国際大学 学長大森昭生はじめに──地方・小規模・新設寄稿

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