カレッジマネジメント208号
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20リクルート カレッジマネジメント208 / Jan. - Feb. 2018応するIT企業で採られている経営方式を参考にしたという。常設委員会を2割程度減らし、必要に応じて委員会の中に設定する部会をプロジェクトチームとして位置づけ、テーマごとの課題解決に対応する体制とすることで、フレキシブルな運営体制を構築した。こうした改革により、学長リーダーシップとそれを支える組織体制のもと、迅速な意思決定と業務遂行が実現しているという。もちろん、大学の中には様々な意見があり、全員が同じ方向を向いているわけではないこともある。しかしながら、大学の基盤となる方向性は「研究第一」である点で揃っているので、教員・職員共に、生産的に議論することが可能となっているという。なお、法人との関係については、法人運営の中心となる常務理事会のメンバーを、学長を含む大学の教員が半数を占めることから、教育研究の現場の意見が尊重される体制となっている。研究大学であることの強みは、学生の教育にも活かされている。「学費を学生に還元している比率は全国屈指ではないかと思います。本学はバイオを包括的に学ぶにあたり、1〜3年次の実験・実習の時間がとても多い。例えば、バイオサイエンス学科では3年間で864時間を実験・実習に充てています。この実験量は世界トップレベルの時間配分です」と、蔡学長は話す(図表3)。4年次は全学科で卒業研究が必修である。研究重視の大学として、学生の卒業研究も当然重視されている。研究を実験・実習を中心とした質の高い教育:研究を通じたPDCA体験することは、自らPDCAを回す体験をすることであり、バイオ的なものの考え方、仕事への取り組み方を学ぶプロセスでもあるとされているためである。具体的には、研究とは、①何が問題であるかを考え、何が明らかにされているか、どういう実験をするのか、プランを考える(Plan)。②計画を立てて実験に取り組む(Do)。③実験により出た結果を発表し、議論する(Check)。④その問題の次のステップを思考し、進む(Action)、というPDCAを体験することであると位置づけられている。このような研究を通じたPDCAの経験は、卒業後どのような進路を選んだとしても活きる経験であり、そのことが学生に対する高い教育成果につながっているという。この研究を通じた教育を実現するためには、高い研究能力を有する教員、研究に集中できる環境、最先端の研究器具・機材が必要である。「研究第一」という方針が明確であるため、設備投資のポイントも一貫しており、学部の卒研生も、その恩恵を享受し、研究に没頭することが可能となる。さらに、このような研究のプロセスの中では、実験結果を報告する、他者と議論することが必ず求められる。この力を育てるために、1・2年次では論理的にレポートが書けるようになるための教育、3年次からはプレゼンテーションや研究室でのディスカッションを重視した教育を行い、アウトプットを重視した教育プログラムが構築されている。さらに、1年次から3年次まで継続的に、問題解決・チームによる課題対応・社会理解と社会適応をテーマとするキャリア教育が用意されており、実践的な能力育成が図られているという。研究好きな理系の学生1年2年3年4年ユニット:創薬・機能物質基礎教育、創薬科学専門教育、    機能物質専門教育ユニット:情報生物学技術教育、情報生物学専門知識教育ユニット:動物科学専門教育、AB専門実験、食品衛生学教育、    食品機能学教育、実験動物学教育、生物多様性学教育ユニット:環境科学基礎教育、植物科学教育、植物科学応用教育ユニット:医療情報技術コンピュータ専門教育、医療情報技術専門知識教育ユニット:遺伝子・細胞科学基礎教育、遺伝子科学教育、細胞科学教育創薬・機能物質プログラム情報生物学専門プログラムアニマルバイオサイエンス専門教育プログラム環境・植物制御プログラム医療情報技術専門プログラム遺伝子・細胞新機能プログラム臨床検査学プログラムバイオサイエンス学科アニマルバイオサイエンス学科コンピュータバイオサイエンス学科各学科別専門教育プログラム卒業研究学部共通専門コアプログラム学部共通一般教育プログラム学部共通専門コアプログラム一般教育コアプログラム一般教育教養プログラム一般教育専門教育図表3 卒業後の活躍分野に合わせたカリキュラム

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