カレッジマネジメント208号
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22梅花女子大学(以下、梅花)は、キリスト教主義の女子教育を使命として1878(明治11)年に開設された梅花女学校に始まる。女子専門学校を経て1950年には短大となり、1964年には4年制大学を開設して、現在に至る。2018年度には創立140周年を迎える、伝統ある大学である。一貫した使命のもとで教育の伝統を培ってきたが、近年の少子化の影響は避けることができず、2000年代に入ると短期大学部も大学も定員割れが続き、2009年の大学の入学者は定員の50%を下回るという事態に陥った。短期大学部がそれ以上の定員割れをしていたことは言うまでもない。なぜそこまでになったのか。小坂賢一郎理事長は、「それには2つの理由があります。1つは、経営の責任が不明確で、誰も責任をとらない構造になっていたことです。定員割れが続いても来年は何とかなるのではという、希望的観測のみで経営がなされていました。もう1つは、大学の将来に関するビジョンがないことでした。大学が進むべき道が示されていない中で、教職員は何をしたらよいか分かるはずもありません」と説明される。それが図表1に見るように志願者は大きく増加し、2017年は2009年の約8倍にも達し、十分に定員を充足するまでになった。看護や口腔保健等の医療系学科の志願者は突出しているが、それ以外の全ての学科においても志願者は増加傾向にある。たかだか10年に満たない期間で、なぜこうしたV字回復が可能になったのか。その改革の軌跡をたどってみよう。小坂理事長は2010年に現職に就任する。前職は同志社女子大学にあり、また、梅花の理事でもあった。両大学はプロテスタントの会衆派に属す。これらの背景から理事長に就任したわけだが、実のところ、この窮状から脱することができるのか、甚だ自信はなかったという。同じ頃に就任した長澤修一学長と2人、建学の精神以外は全て変えるという意気込み、経営と教学は表裏一体というモットーのもと、タグを組んで改革に当たってきた。さて、改革の基本方針は5つある(図表2)。これらは、大学経営の観点から言えば決してメリットではなく、むしろデメリットにもなりかねないものだ。それをいかにしてメリットに転化し、独自性として打ち出すかが鍵であった。第1は、キリスト教主義である。これはデメリットというわけではないが、必ずしも集客に結びつくわけではない。しかし、この建学のバックボーンを譲ることはできない。第2は、創立140年の歴史と伝統である。6万人にも及ぶ卒業生を生み出してきた教育方針は堅持すべきものとなる。もしかしたら改革の桎梏になるかもしれない伝統を、これからの大学の存立基盤、応援団として活かそうと考えた。第3は、女子教デメリットをメリットにリクルート カレッジマネジメント208 / Jan. - Feb. 2018デメリットを逆手にとった改革でV字回復を実現小坂賢一郎 理事長長澤修一 学長梅花女子大学2C A S E驚異の志願者回復

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