カレッジマネジメント208号
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25リクルート カレッジマネジメント208 / Jan. - Feb. 2018返し流される音楽が人々の口に上るようになれば、しめたものである。イメージを確実にするための1つとして、積極的に産学連携も進めている。一般に産学連携と言えば教員の研究に関する企業との連携を指すが、梅花の場合は学生と企業との連携を指す。学んだ専門をもとにした学生たちのアイデアを企業と連携して製品化するのである。「食」を媒介にした連携は多岐にわたり、考案した各種のレシピ等から商品化されたものも多い。「声」を媒介にしたCMや本の読み聞かせ等の取り組み、最近では、NTTの研究所との連携による触角の研究が始まっている。これは梅花の重要な広報活動であるとともに、学生の教育の一環でもある。学生にとってはPBLのよい機会であり、自分の考えや意見をどのように相手に伝えるか、アイデアをどのようにして実現していくかを、これらの産学連携を通じて学んでいく。そして、一番大事なことは言うまでもなく学生の育成である。社会の多様な分野で活躍してくれる卒業生を送り出すことが、長い目で見たとき最も効果的な広報であり、改革の成果を示すものである。「チャレンジ&エレガンス」が教育目標を表す言葉だとすれば、それを実現するための教育課程がエレガンス科目とチャレンジ科目である。エレガンス科目とは、入学者全員が共通に学ぶ科目群である(図表3)。ここで目を引くのが、芸術・身体表現として、バレエ、ダンス、ミュージカルが開講されていることである。エレガンスになるための条件の1つが、身体をつくるということなのであろう。これと関連して、2016年には梅花歌劇団「劇団この花」を設立し優秀な指導者を招き、本格的な活動を始めている。これもエレガンスの一環である。他方、チャレンジ科目は各学科の専門科目であり、4年間の学習の総まとめとして卒業研究が置かれているが、それとともに各学科で取得可能な資格と、それに向けての履修が重視されていることに特徴がある。チャレンジとは、社会で仕事をするチャレンジの意味が込められている。着々と改革を進めてきたように見えるが、実のところ、「薄氷を踏むような思いで1年1年綱渡りで過ごしてきました。5カ年計画を立てる等、とても無理でした。まだ強靭さが足りないこと、深く認識しています。本当の改革はこれからです」と、理事長は言われる。では、何が本当の改革なのか。それはカリキュラムの改革だと学長は言われる。「まず、専任教員を中心とした体制でもって、専任が教養と専門の両方教えるような体制を作ることです。そのためには、教育だけでなく研究面でも優秀な教員を集めることが重要です。それと並行して、スリムで魅力的なカリキュラムとすべく、2016年度から第1次カリキュラム改革を始めていますが、2019年度から第2次カリキュラム改革に着手する予定です。一人ひとりの学生の個性を活かす梅花の真のオーダーメード教育を作ることが目標です」。学部学科の改組が柱を立てる工程だとすれば、そこに屋根を葺き、壁を作る作業がカリキュラム改革ということになるのだろう。教育力を高めてエレガンスにチャレンジする女性を育成することが、大学のブランド力向上につながる。デメリットは確実にメリットに転化しつつある。真のオーダーメード教育を目指して(吉田 文 早稲田大学教授)特集 小さくても強い大学の『理由』図表3 チャレンジ科目・エレガンス科目チャレンジ科目(各学部・学科の学び)4年3年2年1年エレガンス科目(全学科共通の学び)卒業研究キリスト教科目バレエ・ダンス芸術歴史・文化語学専門力海外研修資格実践力体験型授業グループ型授業対話型授業

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