カレッジマネジメント208号
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26メディアで頻繁に私立大学の窮状が報じられるようになった。特に地方に所在する私立大学が学生集めに苦労していて倒産の危機にあるという。私立大学のなかには公立大学への転換に活路を見いだす例もある一方、自らの努力で躍進を遂げる例もある。いずれにせよ、少子高齢化が進む日本社会において高等教育の行く末を見定めるためにも、私立大学の動向は重要である。とりわけ地方創生の観点から見れば、地方で私立大学が生き残れるかどうかは、ひとり私立大学の課題にとどまるものではなく、日本社会全体の課題だ。そこで本稿では、中小規模の地方私立大学によるどのような取り組みが奏功しているのか、金沢星稜大学(以下、星稜大)の事例を通して考えてみたい。星稜大は、大学教育の出口保証を強化することで地域における評価を高め、「就職といえば星稜」と言われるまでになった。そこには学生を着実に成長させる仕組みが機能している。実際にどのような取り組みで効果を上げているのか、宮﨑正史学長にお話を伺った。金沢星稜大学は1967(昭和42)年、「金沢経済大学」として200名定員でスタートを切った。その名称が示す通り、経済学部経済学科のみの単科大学としての出発だった。その後2002年に現在の大学名に改称し、2003年には経済学部に「現代マネジメント学科(現在の経営学科)」が設置されている。さらに、2007年に人間科学部が、2016年には人文学部が設置され、現在の3学部体制となった。2017年5月現在の学生数は、大学院(経営戦略研究科)を含めて2,451名だ。星稜大の特徴は「何よりも、研究大学ではなく教育大学である」ことだと宮﨑学長は述べる。そのことは、開学以来の建学の精神である「誠実にして社会に役立つ人間の育成」に明瞭に表現されており、学長はこの精神に忠実でありたいと強調する。つまり、「教育大学」として、社会に役立つ自律した職業人の育成こそが星稜大の使命だという。このために、星稜大は各ディシプリンに即して専門性を身につけ、経済人・企業人として、スポーツ指導者として、保育士や幼稚園・小学校の教員として、グローバルな場でボーダレスに活躍できる人材を育成しようと取り組んできたという。星稜大は昨年(2017年)、50周年を迎えた。この半世紀の歩みは、経済・経営から教育系や人文系の学部設置へと進み、教育のダイバーシティを高め、育てる人材の裾野や幅を広げてきた歴史として描くことができると宮﨑学長は説明する。人間科学部におけるスポーツ学科の設置は、星稜が伝統的に強みとしてきたスポーツ分野を活かした学科であり、こども学科は小学校教員・幼保の道を目指す学科であり、地域の小学校との連携や、附属の二つの幼稚園リクルート カレッジマネジメント208 / Jan. - Feb. 2018卒業時点における出口保証の強化が可能にした飛躍的成長宮﨑正史 学長金沢星稜大学3C A S E「建学の精神」に徹した人材育成

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