カレッジマネジメント208号
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28リクルート カレッジマネジメント208 / Jan. - Feb. 2018うだ。もちろん、就職が全てというわけではない。教育内容が重要であることは言うまでもないが、それは外からはなかなか見えにくい。しかし、就職が良くなると、間接的に教育の質も良いと見られるようになり、高校や受験生の耳目を集めるようになった。それは学生の変化として現れた。2000年代後半からの志願者増を背景に、目的意識のはっきりした学生が増え、自律的に自分で考え、計画し、実行し、提案・発表できるように変わってきているという。授業中の私語が減り、学生がきちんと授業を聞くのが日常的になった。学生の変化は教員のモチベーション向上にもつながっているそうだ。星稜大の飛躍の秘訣は、就職支援を含め、学生が着実に成長して卒業していける支援体制を整備・強化したことにある。その代表例が、2008年から開始された「難関試験突破プログラム」、略称CDP(Career Development Program)だ。現在、「公務員コース」「税理士コース」「教員コース」の3つで構成され、公務員(国家公務員一般職、地方公務員上級職)、国税専門官、税理士、警察官・消防士、教員を目指す学生の支援が展開されている。学外の資格予備校よりも経費を低く抑え、正課授業の多い1、2年生までは通常の授業時間外(5時限目以降)に授業が設定される等、資格試験の合格に向けた学習と大学教育における通常の学習とを両立できる支援体制がとられているのが特徴だ。公務員・税理士コースでは、CDPで取得した単位の一部が卒業単位としても認められる。もちろん、学生が正課とCDPのダブルスクールを続けるのにはなかなか忍耐がいるが、CDPは確実に成果を上げ、年々合格者の数が増加する傾向にある(図表2)。2016年の実績(のべ数)で見れば、国家公務員現役合格41名、地方公務員現役合格者34名、地方公務員(保育士)合格者9名、教員(正規)現役合格者27名だ。さらに、試験合格へのより高い意欲を引き出すため、全てのコースについて、その合格者には授業料返還をインセンティブにしていると宮﨑学長は述べる。2019年度には正課における成績優秀者に対しても授業料減免制度を導入するという。学生の成長を促す仕組みはCDPだけにとどまらない。例えば、「SEIRYO JUMP PROJECT(SJP)」は学生と教職員が連携して行う学生支援プロジェクトだ。ボランティア活動等について学生が大学に提案し、認められれば大学は一定の予算を配分して活動を支援する。和装で外国人観光客に英語で金沢の観光案内をする「おもてなし娘」、オープンキャンパスでの学生イベントの企画・実行を行う「オープンキャンパス活性化プロジェクト」、学内外をイルミネーションで飾る「キャンパスデコレーション」等、多様なプロジェクトが展開されている。その中心になっているのは女子学生だ。経済学部のみだった頃は女子学生比率が10%を割る状態だったが、今や、人間科学部こども学科や人文学部は女子学生が70%を越えるようになったという。キャンパスが華やかになっただけでなく、女子学生が学内外で自主活動を牽引してくれるようになった。当初は女子学生だけで立ち上がったプロジェクトに男子学生も加わり、取り組み自体が活性化していると宮﨑学長は語る。女子学生に特化した就職支援として「星稜女子力MOONSHOT講座」も開講され、その活力をさらに伸ばす取り組みも進められている。学生の成長を支え就職につなげる仕組みの創出図表2 CDPの成果(公務員・教員合格者推移)0102030405060702016年2015年2014年2008年教員採用試験(小学校)地方公務員(公安)地方公務員(行政)国家公務員(人)46914151819181812612191105

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