カレッジマネジメント208号
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29リクルート カレッジマネジメント208 / Jan. - Feb. 2018加えて、ここ数年、新たな学生支援の充実・強化が図られている。その一つが2012年に始まった「ほし☆たび」だ。海外定期フェリーに1週間乗り込み、洋上で参加者―クルー(乗組員)としての1・2年生、就職活動を終えたスキッパー(舵取り)としての4年生、そして教職員―がグループディスカッションを行い、自分の力で考え発表していく課題解決力を養う洋上研修だ。2014年にはウラジオストク、2015年からは上海への航海を行っていて、その様子は情報サイト「ほしカフェ」(http://hdiaryt.exblog.jp/)で伝えられている。星稜大はグローバル化のなか、海外で学ぶ機会の拡大にも努めてきた。53の協定校を有し、学部留学、短期・長期の語学研修、インターンシップ、ボランティア、エリアスタディーズ(国外の地域を学ぶ)等があり、年間150人強が参加しているという。さらに、欧州エラスムス奨学金制度の下、ハンガリーの大学と2017年度~19年度まで毎年2名が奨学生として学べる環境を整備してきたという。もちろん、学生を育てる取り組みは学士課程教育が中心だと宮﨑学長は強調する。ゼミ活動を重視し、1年から4年までゼミに所属して学ぶようにしている。初年次の「基礎ゼミナール」では大学での学び方や社会人基礎力育成につながる学びが行われ、2年生からは、専門領域を踏まえて地域に出て地域課題について学ぶものが多い。3・4年生に課す「卒業研究」は2年前から必修化された。カリキュラムの体系化として、カリキュラム・マップやナンバリングを実施し、卒業研究のためのルーブリック導入も目指している。質保証の一環として、学生による学びの体系化を進めていると学長は説明する。今後も、星稜大の魅力を高める努力を続けていきたいと学長は語る。その基本は、各学部の教育内容を高めることだ。3つの異なるディシプリンがあるが、今後はディシプリンの多様性を拡大していくことが考えられる。定員管理が厳しくなっている昨今、定員を増やさずに再配分し、魅力的な学部を設置することも考えていきたいという。こうした星稜大の取り組みや戦略から見えてくるのは、学生の成長が、大学における正課内外での経験をいかに豊かなものにしていけるのかにかかっているという点だ。当然といえば当然だが、それこそが大学の本質的な存在理由の一つだ。大学は総力を挙げて学生経験の幅を広げていく努力を続け、その成果を社会に発信していかなければならない。そうした意味で、星稜大が北陸3県の公私立高校全てを回り、卒業生の状況についての情報提供に努めていることは注目される。宮﨑学長自身まだまだ足らないと感じているものの、高校の先生には大学に進学した卒業生がどう学びどこに就職したのかを丁寧に伝える取り組みをさらに強化していきたいと宮﨑学長は述べる。最近では、入学後の留学の可能性や語学力育成に力を入れているかどうかといった点に受験生の目が行くようになっているし、新入生のなかには学部での教育内容に関心を持つ学生も増えてきているという。大学からの情報発信の強化が求められる所以だ。そもそも、星稜大は国立大学の受け皿となっている面があり、国立大学受験に失敗して入学した学生が少なくない。しかし、国立大でなくとも最終的に希望先に就職を果たす等、満足して卒業している学生が多いと学長は胸を張る。国立に行けなかった学生を不本意のままに卒業させているわけでなく、むしろ自分にとっての良い学び、必要な学びに気づいて卒業していく学生が出てきているという。そうした学生の高い満足度が徐々に社会に伝わり、好循環を生んでいるのではないか。宮﨑学長の話からはそんな印象を強くした。星稜大の最大の強みはやはり出口保証の強化だ。入口では目標意識をしっかり持った学生を受け入れ、プロセスでは多様な経験を積ませて成長させ、個々の学生にふさわしいキャリアを追求できるよう支援する。そこに地道できめ細かな取り組みが求められることは間違いないが、それは大学教育の本質でもある。その基本に忠実に取り組んできた星稜大が今後いかなる展開を見せるのか、引き続き注目していきたい。(杉本和弘 東北大学高度教養教育・学生支援機構教授)鍵は学生の経験と成長についての情報発信特集 小さくても強い大学の『理由』

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