カレッジマネジメント208号
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41リクルート カレッジマネジメント208 / Jan. - Feb. 2018どのように反映されるのだろうか。現行の首都大の入試は、「一般選抜」と「多様な選抜」と呼ばれる2種類に大きく分かれる(図表)。「一般選抜」は知識・技能を中心に学力を測るタイプ。「多様な選抜」は、科目以外の評価を重視するタイプだ。以下に特徴的なものを見ていこう。一般推薦の推薦基準・出願要件は学科により異なるが、評定平均を課している場合は概ね4.0~4.3以上と厳しく設定されている。それに加え、知識・技能・表現力を問う小論文、主体性・コミュニケーション能力を測る面接を課す等、多面的・総合的に評価する入試設計になっており、いわゆる「学力の3要素」を測る入試として機能している。指定校推薦も概ね同様に厳しい条件を課しているという。AO入試のうちグローバル人材育成入試は、その名の通り英語4技能に対応した入試だ。1次試験で英語外部試験スコアを活用し、2次試験では小論文(英語または日本語)、面接を課す。出願要件は一般推薦と同等であり、それに加えて高い英語力を求めるという、かなり難易度の高い入試だ。その理由は入学後にある。グローバル入試で合格した学生は入学後主専攻に加え国際副専攻に属し、半年から1年間の留学が義務づけられる。首都大では文系でも理系でも、様々な主専攻に国際副専攻を追加して学ぶことができるという。そうしたハードなカリキュラムに取り組める、言葉の壁を越えられる学生をきちんと選抜する必要があるというわけだ。そして、形として最も高大接続型と的評価型を、2020年までに30%以上にするのが当面の目標である。実績として、「多様な選抜」で入学した学生と一般選抜の学生の入学後の成績を比べると、前者が圧倒的に伸びるそうである。その理由を問うと、「まず、第一希望であるため意識が高い。理念を理解し、首都大を選ぶ理由が明確にあるので、スタンスが違います。そして、学力の3要素の『主体性』『学習意欲』を選抜上重視しているので、必然的に自主的に成長していくのです。これは実証的に検証されており、引き続き注力したいと考えています」。そのため、「多様な選抜」においても出願時点でのラインは下げず、学力以外の要素を重点的に評価するようにしていきたいという。多様化を進めながら、次は一般選抜の改革に着手する。「入試はどういう学生を求めるかという重要なメッセージであり、それが伝わらないような入試をしても仕方ない。知の集積再生を目的とした20世紀型の入試では通用しなくなるのは当然のことです。21世紀に生きるうえで必要な能力を見定めるのは大学の使命でしょう」という、川上教授の言葉が印象的だった。(本誌 鹿島 梓)いえるのが、ゼミナール入試だ。大学講義(ゼミナール)を複数回受け、その履修状況を踏まえて合否を測るもので、全入試の中で最も入学後の成績が良いという。ゼミナールは前期土曜日3回、サマーセッション2日、後期土曜日4回受講し、その履修成績や面接、志望理由書、調査書等を総合的に評価する。講義は各1時間半、演習実験は各3~5時間にも及び、レポート提出等も厳しく課される。「大学の授業と高校の授業は時間も質も全く違うので、そこを丁寧に接続する入試です。その内容についていけるということは、その分野の学力や好奇心、意欲が高いと考えられます」と川上教授は話す。このように、「多様な選抜」はその名の通りかなり幅広い。こうした設計について、「大学側で共通項は絞るが、それ以外は各学科の狙いに合わせた設計にしている」と川上教授は話す。都市の課題に挑むためにはある程度の学力と、柔軟な横断的思考が必要であり、それを学科の学問に合わせてどう設計・評価するかを試行錯誤しているようだ。現在入学定員1570名のうち約20%を占めるこれらの多面的・総合図表 首都大学東京の入学者選抜区分入試区分特色・区分一般選抜・学力試験を中心とした選抜。・大学入試センター試験と大学独自の第2次学力試験により、2段階選抜を行う。・分離分割方式により、前期日程と後期日程に分けて実施する。多様な選抜一般選抜では測れない能力や資質を持つ学生を受け入れるための選抜推薦入試一般推薦指定校推薦AO入試ゼミナール入試科学オリンピック入試グローバル人材育成入試SAT/ACT・IB入試社会人、帰国子女、中国引揚者等子女、私費外国人留学生等を対象とした選抜特別選抜社会人入試チャレンジ入試帰国子女入試中国引揚者等子女入試私費外国人留学生入試

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