カレッジマネジメント208号
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44リクルート カレッジマネジメント208 / Jan. - Feb. 2018話の力をつけることを意図しています。小さな教室は、警察官志望の学生に警察OBの先生がマンツーマンで試験の直前対策をするといった使い方にも向いています。キャンパスの中心にはキャリアセンターとエクステンションセンターがあります。キャリアセンターは夜20時まで開けていて、駅前ですから、就活中の学生がいつでも相談に行けます。スタッフの8人中5人はキャリアコンサルタントの国家資格も持っています」。建物自体の仕様からスタッフの配置まで、八尾駅前キャンパスは「全部キャリア教育用に作られたと言っても言い過ぎでない」というわけだ。そうした取り組みの成果はまず、各種資格・試験をあわせて年間のべ1400名ほどの合格者という数字に表れている。この中には、公認会計士に現役で合格、税理士試験の2科目に3年生の時点で合格、慶応、早稲田、中央等のロースクール(法科大学院)に合格、等の事例が含まれている。最近では、合格率4.1%の難関である司法試験予備試験に2年生が1人通るという快挙もあった。「一人ひとりしっかり見て、その子に合った方法でどんどんバックアップしていくと、大化けする。それが本学の強みだと実感しているところです」。八尾駅前キャンパスができ、キャリア教育科目が整備されたことで実就職率のランキングが上昇しているという。田畑学長は、その成果についてこう語る。「2012年度までは、関西の私立大学で下位グループに沈んでいましたが、上位大学をキャッチアップするところまで来ました」。数字ばかりでなく質的な成果も、企業から、あるいは高校からの評価で強く実感しているという。「経済学部が卒論を出さないといけないというのは、私学としては珍しいのではないでしょうか。そういった基本の授業と、色々なプログラムを合わせて、かなり実力の底上げになっていると思っています。八尾では、東南アジア含めてグローバル展開している企業が規模の大小を問わず多いので、海外インターンシップでも協力を頂いてタイやベトナムに学生を送っていますが、そこで『ベトナムに残って働いたらどうだ』と声をかけてもらったり、地元の企業から、『大手ばかり狙わないでうちに来てくれ』との要望が強く出てくるようになりました」。地元の高校との関係性にも変化がみられる。従前は、近い大学にもかかわらず、結構心理的な距離があったそうだ。しかし、「この5年くらいは、公務員志望の生徒さんに、先生から本学の名前を出して頂けるようになった」という。また、「実績が入学者を、入学者が実績をというように、好循環が生まれることでSコースが発展したという実感が現場にはあります」と語る。「例えば2018年の大学案内では、弁護士や司法書士になった卒業生を7人紹介しています。87年卒の1人以外は、Sコースで学んだ卒業生です。そういう実績を見て、法曹を目指す生徒に高校の先生が本学を紹介してくれたり。警察官志望で、お父さんもおじいさんも警察官という生徒が、お父さんに『経法大に行ったら警察官への近道になる』と勧められたり。志を持って法曹や公務員を望んで入ってくる学生が目立ってきました」(田畑学長)。今後の中期展望として田畑学長は、現在2880名の収容定員を3000名以上の規模にして、「特色ある中堅の社会科学系総合大学」に発展させることを目標としているという。経済学を専門とする田畑学長は、中小企業論における「中堅企業」をイメージしている。「定義が難しいですが、規模はそれほど大きくない、売り上げでいうと1兆とかではなく、数百億から数千億円くらい。専門分野でノウハウを持ち、特色を持つ企業。こういうのが各業界にあるわけです。そういう概念の中で、社会科学系総合大学という分野での『特色ある中堅』を目指そうということです。特色とか中堅の中身については、これまでの実績の中から、それぞれが考えていこうじゃないか、われわれの特色とは何か、中堅にふさわしい中身は何か、というのを思い描くプロセスとともに、総合性や安定感、そこでの躍動感をどう作っていくのかは議論しているところです」。実績が志願者を増やし、入学者が実績を出す好循環「特色ある中堅の社会科学系総合大学」を目指して(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)

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