カレッジマネジメント208号
48/60

48リクルート カレッジマネジメント208 / Jan. - Feb. 2018い産業への人材供給が高等教育にも求められるなか、それに応えるための私立大学が次々と設立されてきた。そうした私立大学として、パンニャサストラ大学やカンボジア・メコン大学などを挙げることができる。パンニャサストラ大学は、カンボジアにおいて全ての教科を英語で教えることを始めた最初の大学※2であり、首都プノンペン以外に地方都市(バッタンバンとシェムリアップ)にもサテライト・キャンパスを設けている。また、カンボジア・メコン大学は2003年の大学創設時から人文・外国語学部に日本語ビジネス学科を開設している。多くの私立大学がビジネスに関連した学科(経済、経営、金融等)を中心とする傾向にあるが、観光、情報技術(IT)、医・歯・薬学、看護といった分野で特徴を打ち出している大学も見られる。さらに、外国資本による私立大学の設立も近年のひとつの現象であり、カンボジア大学やキリロム工科大学といった日本人実業家たちによって設立された大学もある。このように多様な特徴を持った私立大学は増えてきたが、それと同時に、多くの大学で学生達は主に経済学・経営学をはじめとする人文社会科学分野を専攻しており、必ずしもカンボジアの労働市場で求められている人材の需要を満たしているとは言えない。特に産業を発展させるうえで必要な工学系の人材の育成に関して、実験設備や施設への投資が財政的な制約となり、工学分野の教育プログラムを開設している大学の数は未だ限られたものでしかない。なお、この問題は公立大学に関しても同様であり、一部の工科大学やポリテクニクを除いて、十分な工学教育を提供することができていない。ここまで指摘してきたように、カンボジアの高等教育大学教員達の現状が抱える課題は多岐にわたる。なかでも、カンボジアの高等教育セクターが拡大を続けるなかで、教育・研究の両面における質を向上させていくことが不可欠であり、そのために大学教員が果たす役割は極めて大きい。しかしながら、大学教員を取り巻く環境は厳しいものがあると言わざるを得ない。そこで、カンボジアの大学教員の現状に関して筆者が国際協力機構(JICA)と共同で行った研究の成果を紹介したい。この研究では、カンボジアの主要大学10校(公立7校、私立3校)に所属する531名の教員から質問紙調査の回答を得ることができた。なお、調査は2013年に行ったため、データとしては少々古いのだが、その時と較べて2017年現在の状況が大きく改善されているわけではないため、ここで得られた知見は今でも十分意味を持っている。この研究を通して、カンボジアの大学教員が置かれている労働条件や教員の満足度に関して、主に次の4点が明らかになった。1点目は、公立大学のほうが私立大学に比べて労働条件及び教育・研究環境が良く、教員の現職に対する満足度が高いことである。特に、都市部の公立大学は労働時間の内訳に関して比較的バランスがとれており、学術的貢献の面でも優れていることが分かった。(8)カンボジアの経済・産業・商業・農業・社会・文化の諸側面における開発に対して、高等教育が十分なインパクトをもつことができるように、関連する省庁の連携や協調の促進(7)国家に必要とされる人材育成やスキルのあり方を踏まえた、高等教育機関の管理運営プログラムの開発(6)すべての高等教育修了者たちが、変化の激しい時代における国家の開発に貢献できる知識とスキルを獲得すること(5)国家の開発ニーズを満たすための研究開発に教員ならびに学生(とくに大学院生)が取り組むことのできる環境の整備(4)国内の認証基準を満たし、国際的な高等教育システムで認められる、質保証の制度の開発(3)高等教育機関における生涯学習と職能開発の機会の拡充(2)国家の優先課題へ対応するための質の高い学術プログラムの開発 (とくにSTEAM[science, technology, engeneering, creative arts and mathematics]分野の拡充)(1)社会経済的な背景にかかわらず、能力のある学生たちへの高等教育機会の提供表1 ヴィジョン2030で掲げられた優先課題

元のページ  ../index.html#48

このブックを見る