カレッジマネジメント208号
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56リクルート カレッジマネジメント208 / Jan. - Feb. 2018なかでも、プログラムに採択された機関の取り組み事例を見ると、両立支援、ポジティブ・アクション、研究力向上の3点に、特に力を入れてきたことがわかる。ここでいう「両立支援」とは、研究とライフイベントの両立、仕事と生活の両立を促すための取り組みである。研究支援員の配置、ライフイベントによる研究中断からの復帰支援(例えば、スタートアップ研究費、学会参加、論文投稿の支援)、学内保育施設の設置、病児・病後児保育や学童保育に対する支援、相談体制の整備等が主な施策として挙げられる。研究支援員は、出産・育児・介護等により十分な研究時間を確保できない研究者の研究活動を支援する制度であり、調査・実験の補助、データ入力・分析、資料作成等がその業務となる。これらの補助業務はスキルアップや将来のキャリアを考える機会ともなり得ることから、大学院生や学部生を支援員として雇用する大学が多い。また、「ポジティブ・アクション」には、女性教員を採用する部局に対するインセンティブ付与、女性採用枠の設定、女性限定公募のほか、上位職への積極登用も含まれる。女性限定公募を前提に学長裁量枠を部局に配分する、女性教員増加を全学方針として示した上で、中長期的な人事計両立支援、ポジティブ・アクション、研究力向上画を部局に提出させる等、ガバナンス改革の方向に沿って、学長権限を有効に機能させつつ推進している様子が窺える。「研究力向上」に向けた施策としては、競争的資金獲得や研究スキルアップ(例えば、英語論文作成、英語プレゼン等)を目的としたセミナー、女性研究者をPI(Principal Investigator)とする共同研究への支援、国際学会参加への支援、シニア教員や先輩教員をメンターとする支援体制等が挙げられる。文部科学省の委託を受けてプロジェクトの公募・審査、推進・評価などの業務を行う科学技術振興機構の山村康子プログラム主管は、研究環境整備が進んだことで、ライフイベント要因の女性研究者の離職者が大幅に減少したこと、ライフイベント期間中に支援を受けた女性研究者の研究業績が高い水準に維持されていること、産休・育休を取りやすくなる等、職場の意識・環境も変わってきたこと等の成果を挙げる。また、大学執行部と部局の間にあった温度差が、プログラムに採択され、それを推進する中で縮小してきたこと、採用割合や在職割合等を目標値化することで、全学や部局の女性教員数に関心が向くようになったこと等、大学運営面での効果にも注目する。支援事業により明らかになってきた成果と課題国による女性研究者研究活動支援事業の推移事業名選定年度事業の目的女性研究者支援モデル育成プログラム (補助期間3年)2006〜2010研究環境の整備や意識改革など、女性研究者が研究と出産・育児等を両立し、その能力を十分発揮しつつ研究活動を行える仕組みを構築するモデルとなる優れた取り組みを支援女性研究者養成システム改革加速プログラム (補助期間5年)2009〜2010特に、女性研究者の採用割合等が低い分野である理学系・工学系・農学系の研究を行う優れた女性研究者の養成を加速する女性研究者研究活動支援事業(補助期間3年)2011〜2014女性研究者がその能力を最大限発揮できるよう、出産、子育て又は介護と研究を両立するための環境整備を行う取り組み※ライフイベント及びワークライフバランスに配慮した研究環境の整備と研究力向上のための取り組み=「一般型」※これまでの取り組みをさらに推進しながら他大学、企業等の他機関との連携等、取り組みの普及を行う取り組み=「拠点型」※大学、研究機関、企業等が連携し、女性研究者の研究力向上のための取り組み及び上位職への積極登用に向けた取り組み=「連携型」ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ (事業期間6年、うち補助期間3年)2015〜ライフイベント及びワークライフバランスに配慮した研究環境整備、女性研究者の研究力の向上のための取り組み、積極採用、復帰・復職支援、上位職への積極登用※単一機関内の部局横断的な取り組み=「特色型」※大学や研究機関が企業等と連携し、地域や分野における活躍を促進=「連携型」 →「牽引型」文部科学省及び科学技術振興機構の公開情報(ホームページ)に基づき筆者作成2013 一般型、拠点型2014 一般型、連携型2015特色型、連携型2016〜2017 特色型、牽引型

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