カレッジマネジメント210号
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15できる技術者の育成に取り組む。北九州市立大学(申請代表校)、九州工業大学、熊本大学、宮崎大学、広島市立大学が取り組む事業は、最新の人工知能とロボット技術の社会実装まで踏み込んだ、社会人向けの高度人材育成プログラムだ。単なる人材育成に留まらず、学び直しのための大学院入学や企業共同研究、新規事業立ち上げ、地域活性化等を包括的に支援する仕組みを提供するという。東洋大学(申請代表校)、東京大学、横浜国立大学、名古屋大学、名城大学は、大学の講義をバーチャルに再現し、講義のシラバスや配布資料・教材等を受講者に提供する大規模公開オンライン講座「MOOCs」を活用。ICT技術、特にIoTで課題を解決する技術(超軽量組込み、ビッグデータ解析、アクセスコントロール、人工知能等)を短期に教育するための社会人再教育コースを提供する。情報セキュリティー大学院大学(申請代表校)、東北大学、大阪大学、和歌山大学、九州大学、長崎県立大学、慶應義塾大学が取り組むのは、情報セキュリティー人材の育成だ。履修証明/BP認定も可能な120時間超の教育を実施するメインコースを主軸に、最新・専門的な演習・講義だけを抜粋したクイックコースを加えた二種類のコースを提供する。早稲田大学が申請代表校となって進めているスマートエスイーについては、次項で紹介する。「enPiT-Proは5年間のプロジェクト。初年度となる2017年度はカリキュラムの整備等の準備期間であり、2018年度から学生の受け入れを開始し、事業が本格稼働する予定です。18歳人口が減少していく中で、リカレント教育は今後、大学経営面の観点からとしても重要となってきています。enPiT-Proの情報技術人材への取り組みが、大学における社会人学び直し機能の充実につながることも期待しています」(髙木氏)。リクルート カレッジマネジメント210 / May - Jun. 2018のぼったという。「多くの大学からの申請があり、社会人の学び直しに対する大学側の意識の高さ、先端研究の知見を持つ大学との人材育成プログラムに対する企業の期待を実感しました」(前出・髙木氏)。また、複数の大学間と産業界との体制が適切に構築された体系的で高度な短期教育プログラムであること、社会人の学びやすい工夫や企業からの要望が高い即戦力につながる学習となることが特に重視された点であるという。体系的かつ高度で実践教育プログラムを開発してもらうために、3カ月から6カ月(最長でも1年以内)という短期の受講期間も条件とした。教育内容は大学院修士レベルであること、文系出身の技術者でも学べる内容であること、最先端の知識・技術の科目設定、デザイン志向やマネジメント等のビジネス論についてもプログラムに組み込むことを推奨したという。夜間・土日開講、集中開講、オンライン講座等、社会人が学びやすい工夫や、博士課程進学への支援等受講者のモチベーションアップにつながる仕組みも重要なポイントの1つである。今回採択された選定事業は5件。名古屋大学(申請代表校)、静岡大学、広島大学、愛媛大学、南山大学による、組込み技術者の社会人学び直しを行う事業では、「車載組込みコース」と「IoT組込みコース」を大学に整備し、基盤技術と先端技術の学び直しとともに、企業の開発現場で活躍採択5件の顔ぶれ特集 人生100年時代の社会人教育1,800,0001,600,0001,400,0001,200,0001,000,000800,000600,000400,000200,0000 約79万人 (高位シナリオ) 約41万人 (低位シナリオ) 約59万人 (中位シナリオ)100.0102.4104.8107.1109.4111.6113.9116.0118.1120.2122.3124.4126.4128.4130.5132.52011年2010年(国勢調査結果)2012年2013年2014年2015年2016年2017年2018年2019年2020年2021年2022年2023年2024年2025年2026年2027年2028年2029年2030年ITニーズの拡大により市場規模は今後も拡大現在の不足数2030年の人材不足数人材供給は2019年をピークに減少人材不足数(人)供給人材数(人)高位シナリオ中位シナリオ低位シナリオ(数値は2015年を100としたときの市場規模)人数人材数892,511899,266905,408910,492915,052918,921921,082922,491923,094923,273923,002919,924916,447912,370907,878902,789893,863884,368875,018865,744856,845170,700194,608218,976243,805268,655293,499320,638347,611374,564401,843429,611461,087492,983524,562555,873586,598今回の推計では、将来の市場拡大見通しによって低位・中位・高位の3種のシナリオを設定。低位シナリオでは市場の伸び率を1%程度、高位シナリオでは市場の伸び率を2~4%程度(アンケート結果に基づく将来見込み)、中位シナリオはその中間(1.5~2.5%程度)と仮定した。さらに、低位・中位・高位の各シナリオにつき、今後の労働生産性に変化がない場合と、労働生産性が毎年1%及び3%向上する場合の3種類の推計結果を算出した。図2 2020年には37万人、2030年には79万人のIT人材不足 (経済産業省:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果)         

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