カレッジマネジメント210号
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25期出張等の場合、3カ月単位で休学ができるため復学が容易になる。もう1つは、3カ月であれば、集中力を途切れさせることなく学習できる期間だということである。第4は、履修年限を5年まで延長可能な長期履修制度である。グロービスの場合、あと2つの仕掛けがある。1つは、キャンパスの全国展開である。現在、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、横浜、水戸で開講しており、いずれも駅からのアクセスがよい。こうしたキャンパスの全国展開は、在籍キャンパス間での転校やキャンパスへの通学とオンラインとの組み合わせによる履修も可能としている。そして、これを可能とするための前提として教育内容の標準化があり、いつ、どこへ移動しても継続して教育を受けることが可能な仕組みが構築されている。もう1つは、単科生制度である。図表2にあるように、これは、開講科目を1科目から受講できるシステムであり、いわばお試し制度である。しかし、授業内容も成績評価も全て本科生と同一になされ、本科生になった場合は、単位として組み込むことができ、単科生として支払った学費も学費総額から相殺される。本科生のほぼ全てが、単科生を経ていることを見れば、この制度は入学者の増大に寄与していると言えよう。グロービスのカリキュラムは、「人事組織」「マーケティング・戦略」「会計・財務」「思考」「志」「テクノベート」から構成されている。このうち、やや聞きなれない「思考」とは「クリティカル・シンキング」「ファシリテーション・ネゴシエーション」等であり、「志」とは「リーダーシップ開発と倫理・価値観」「企業家リーダーシップ」等であるから、さほど特異というわけではない。「テクノベート」は、3年前から導入した新たな科目群であり、テクノロジーの分かるビジネス・パーソンを育成するためのものである。カリキュラム・マップからは、ほかのビジネス・スクールとの違いは見られない。しかしながら、それらの具体的な内容は、ほかと大きく異なる。というのは、大学院の本体にあたる株式会社グロービスは、大学院をはるかに上回る規模で年間約1400社(約9万3000人)の企業研修を行う「グロービス・コーポレート・エデュケーション」、また、独立系ベンチャーキャピタル「グロービス・キャピタル・パートナーズ」を有している。これらが、大学院の教育内容に大きな影響を与えているのである。前者からは、ビジネスの最前線の内容を大学院のカリキュラムに盛り込むことができ、後者からは、実際の投資事例をケースとして授業で扱うことができる。これらが、大学院教育を、ただのアカデミックな理論の習得に留まらずに、それを現実のビジネスの世界で使えるものにしているという。教育方法に関しては、ケースを利用した徹底したグループワーク、ディスカッション、プレゼンテーションが採用されている。最近でこそ反転授業が注目されているが、グロービスでは当初よりこうした授業進行を行っており、いわゆる講義形式はとっていない。これはハーバード・ビジネス・スクールの手法に倣ったものだが、ここで重要になるのは教員の力量である。どのように展開していくか予測がつかないディスカッションをファシリテートし、しかも、目的とする内容の習得を可能にするか。ファシリテーション能力の高い教員が求められる。この教材開発と教員のファシリテーション能力に関しては、厳しい基準が設けられている。ある比率で新しいケースを入れて常に内容の更新を図ること、学生の授業評価で2回基準点を下回った場合は、その後半年間、授業を持つことはできない等がそれである。「実務に役立つ学びを徹底して提供するには、個々の教員には厳しいかもしれませんが、教育の質を維持することが必要です。そうでなければ、ビジネス・パーソンの需要に応リクルート カレッジマネジメント210 / May - Jun. 2018教育内容と教育方法図表2 大学院進学の2つのプロセス単科生応募大学院受験大学院卒業本科生単科生はじめは単科生からはじめから本科生に特集 人生100年時代の社会人教育

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