カレッジマネジメント210号
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35リクルート カレッジマネジメント210 / May - Jun. 2018が変更の背景にはある。同窓会が校友会になったことへの卒業生のリアクションについて尋ねると、「正直、必ずしも学校に対してプラスのイメージを持っている卒業生ばかりではありません。距離を置きたいと考える人もいます」と岸本本部長は話す。しかしながら続けて、「でも、やはり卒業後もサポートしてほしい、もっと学びたいという声が寄せられることは多いです。というのは、卒業生達は、職業柄、大企業に入るわけではなく、個人事業主になる、あるいは小さな規模の企業に勤めるといった状態になるので、自分だけでできることは限られてくるのです。ですから、学校を起点にしたネットワークによるサポートが求められることになる」と指摘する。今、校友会を中心に発展させようとしているもののひとつに、プロスポーツチームへのインターンシップ制度(在校生・卒業生ともに対象)がある。なるほど、確かに個人が交渉できるようなレベルのことではない。実績ある組織が動くからこその強みが、ここにはある。インタビューでは、また別次元の構想についても語られた。授業や補講だけではなく、様々な学生サポートについてのことだが、例えば30名の学生に対して1人の教員がつくといった担任制による指導体制を、学生1人に対して「複数の教職員」が担当する体制へと変えようとしているそうだ。これほど社会人学生が増えると、もはやクラスの統一性というものは期待できなくなる。年齢やこれまでのキャリアによって、学生としての構えは大きく異なってくる。ケース・バイ・ケースの対応が必要となり、だとすれば、複数の教職員が協力しながら臨むほうがうまくいくのではないかというプランにたどり着いたという。ただ、複数の教職員が担当するとなると、責任の所在が曖昧になるという問題も生じよう。その点を尋ねると、教職員の意識づけをめぐる説明が返ってきた。一般的に教(職)員会議は、およそ情報共有に終始するものが多い。そうしたなか、日本医専の教職員会議では、月に1回の頻度で特定のテーマに関するグループディスカッションを行っている。学校が置かれている状況を深く理解学生の事情に合わせた指導体制へするためだ。そもそも教員には本校での仕事は授業が半分、学校運営に関する様々な業務が半分だということが、採用面接の時点で伝えられている。いまやグループディスカッションで黙っている人は一人としておらず、立場を超えた活発な議論が交わされるまでになったという。当事者意識の強い、積極的な姿勢を持つ教職員のチームであるならば、おそらく、責任の所在云々という問題を超えた指導ができるはずだ。「結局、学校は組織力なんですよ」と岸本本部長も強調する。驚きに溢れた訪問だったが、いまひとつ印象的だったことがあった。日本医専が、学生や卒業生の満足度調査について、まだ十分に取り組んでいないことである。半年に一度の授業アンケートは行っているし、いずれは満足度調査もやりたいとは思っている。ただ、「タイミングと活かし方について見通しがつかないままにやると、やってしまって終わりになってしまうので」という説明だった。これだけ在学生や卒業生、現場の情報収集に熱心な学校である。当然、満足度調査もやっているだろうと思ったが、考えてみれば、これほどの体制で教育に取り組んでいれば、満足度調査という形式は必要ないということなのかもしれない。アンケート調査をせずとも、在校生が何を感じ、卒業生がどのような期待を新たに寄せているのかは、分かっている。何より校友会という充実した卒業生とのネットワークが築かれ、学びに戻ってくる卒業生たちも少なくない。こうしたつながりこそが、高い満足度の証だということなのだろう。敬心学園では、日本医専のほかにも注目される取り組みを行っている。日本児童教育専門学校は、文部科学省に「デュアル教育」の採択を受けており、様々な企業との連携のなかで、保育士や幼稚園教諭としての基礎力と実践力をつけるための学びを構築している。また、近い将来、専門職大学の創設にもチャレンジする予定だ。「先駆性」を大事にしつつも、現場の声に寄り添うことは忘れない。日本医専と敬心学園に学ぶところは大きいように思われる。卒業生とのつながりこそ高い満足度の証(濱中淳子 東京大学教授)特集 人生100年時代の社会人教育

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