カレッジマネジメント210号
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6リクルート カレッジマネジメント210 / May - Jun. 2018一般労働者※1について、長期雇用や年功的賃金に変化があるかを検討する。まず、長期雇用については、年齢段階別に平均勤続年数が変化しているかに着目すると、図表は省くが、1990年代からの長期的な傾向としてやや短期化する傾向が見られた。年功的賃金については、図1に示す通り、賃金プロファイル(25〜29歳の「決まって支給する現金給与額」を100としたときの各年齢階層の賃金水準)は、最近ほど年齢が上がることに伴う賃金の上昇幅は小さくなっている。長期勤続が労働者にもたらす収入面でのメリットは低下している。企業内での職業能力開発についてはどうであろうか。その長期的趨勢が分かるデータとして、企業の「年間労働費用総額に占める教育訓練費割合」※2がある。数年おきに得られるデータで、直近の2016年の1000人以上規模企業のそれは0.32%と、これまでで最も低い値となった。この数値が高かったのは、2006年(1000人以上規模:0.42%)や1988年(1000〜4999人規模:0.42%)であり、好況期には高くなる性質があった。それが2016年という景気拡大期においても低くなっており、企業が教育訓練投資のあり方を見直していることが示唆される。また、労働政策研究・研修機構(2017)は、独自調査から、大企業やグローバル展開企業では選抜的な教育訓練の比重が増していると指摘しており、教育訓練の対象者を絞ることで投資額が抑えられている可能性が高い。大企業における長期雇用が抜本的に変化していることはないが、一方で、長期勤続で労働者が得られる賃金面でのメリットは小さくなり、また、企業による職業能力開発が選抜的になっていると推測された。第4次産業革命とまで称される近年の急速に進む技術革新に対して、労働者の職業能力開発は非常に重要になっている。もとより企業による能力開発機会に恵まれなかった非正規雇用者、女性、さらに中小企業労働者に加え、大企業労働者にもこれまでのような能力開発機会が得られない人が増えている可能性があるし、また、賃金上昇率企業外での学びの全体像資料出所:厚生労働省「賃金構造基本調査」70809010011012013014015016017018019020021022023024025026060~64歳55~59歳50~54歳45~49歳40~44歳35~39歳30~34歳25~29歳20~24歳2016年2010年2000年1990年1981年(25~29歳=100)図1 賃金プロファイルの推移(1000人以上規模企業における大卒以上の男性一般労働者)

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