カレッジマネジメント210号
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60リクルート カレッジマネジメント210 / May - Jun. 2018行われてきたが、2017年度よりASEANや他の国際標準に合わせるため12年制に延長された。従来の制度では、高校生は高校最後の学年度末の3月に行われ高校卒業試験を兼ねる全国一斉大学入学試験(セーダン試験または10年生試験)を受ける。そこで得た全教科の合計点に従って進学希望の分野を申請し、申請者の得点の高い順に難易度に従い大学・学部・専攻に振り分けられ、定員分だけ入学が許可されるという仕組みになっている。8月頃に合格発表後、12月に大学入学と進み、16〜17歳で入学となる。近年のセーダン試験の合格率は3割程度であり、残り7割程度は高校を卒業できず、従って大学にも進学できない。セーダン不合格者は職業技術教育訓練、外国語教育などによりキャリア形成を行うことが多い。それ以前の高校中退者、中学校中退者、小学校中退者にもそれぞれ職業技術教育訓練のルートがある。なお、2016年3月実施分のセーダン試験から受験者の志望の自由度が増すことになった。2018-19年度には、都市部のヤンゴンとマンダレーの主要な大学11校が、全国の大学に先駆けて、試行的な大学別の入学試験を行う予定である。この試みは、今後、選抜権限の教育省高等教育局から各大学への移行、そして高校卒業試験と大学入学試験の分離につながると考えられる。最近の政策の動きを見ると、2017年2月、スーチー氏は国家教育戦略計画(National Education Strategic Plan: NESP)を公表した。これは、前政権が国際ドナーの支援を受けて始めたプロジェクトである包括的教育セクター調査(Comprehensive Education Sector Review: CESR、2012-16)の最終成果物であり、幼児教育から高等教育をカバーする計画(2016-21年)である。NESPにはASEAN他の国際基準を意識した改革項目が挙げられており、基礎教育の11年制から12年制への延長、児童中心学習や双方向型学習アプローチの導入が打ち出され、高等教育分野でもガバナンス(自治や透明性)、質保証、アクセス等の改善が示されている。NESPはミャンマー教育の近代化への重要な第一歩との評価がある一方、必要とされる予算の確保の実現可能性の低さ、策定過程に市民社会組織や少数民族等の意見が十分反映されていないこと、高等教育より基礎教育重視が鮮明であること等が指摘されている。一方、ミャンマーへの海外投資を見ると、民政移管後の2012〜15年の期間で7倍増となっており、資源型から製造業・通信業への投資分野のシフト、投資セクターの多様化がみられる。投資累積額では、中国、シンガポール、タイ、香港の順であり、日本は11位である。日本の投資は、2016年度5位であり、2011〜16年の期間で80倍と飛躍的に増えている。2016年度の日本の投資額は、製造業、サービス業、ホテル・観光、石油・ガス、不動産の順であった。進出日本企業数は2011年当時の50社から2017年3月時点での340社へと7倍近くに急増しており、分野別では製造業が6割近くを占めている。このような日本の投資・進出企業の急増により、ミャンマー人人材の需要も拡大している。2016年のヤンゴン日本商工会議所による調査によれば、ミャンマーの日本企業が求める人材は、幹部候補、専門家・技師、長期勤務者、日本語話者の4類型に分けられ、特に、日本の投資分野の過半数を占める製造業において、幹部・マネジャークラスの人材不足が深刻である。業務に必要とされる知識・スキルの吸収能力に問題があることがこの不足の主因とされ、企業間で人材の争奪戦や囲い込みが起き、とりわけマネジャークラスで賃金が急騰中である。高い日本語能力を持つミャンマー人に対する需要は高く、売り手市場となり、給料が増加している。拡大する需要状況を反映し、日本企業就職の人気は上昇し、日本語力があることは就職に有利に働くため、必然的に日本語熱が高まっている。日本語学習者数は急増し、日本語学校進学や日本への留学は増加傾向である。国際交流基金が2015年に行った世界の日本語教育機関調査によれば、ミャンマーの日本語学習者は2012〜15年の間で3,000人から11,000人に増加している。日本語能力試験の受験者をみると、2014年の4,434人が2015年には8,000人へと大幅な増加を見せ、特に、初級レベルのN4やN5の受験者が急増している。日本企業就職に有利であること、外国の証明書に信頼性があり「箔がつく」ことがこれらの増加の要因とされる。同国では公的機関による資格や証明書が少ないことが背景にあると指摘されている。日本語学校は全国で約130校日本企業における人材の需要と供給日本語学習ブームと日本留学チャウセー大学でのビルマ語の授業の様子

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