カレッジマネジメント210号
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61リクルート カレッジマネジメント210 / May - Jun. 2018(2016年)あり、学生数が100人を超える大規模校は数校のみである。ちなみに、ミャンマーでの日本語教育の最高峰は大学の日本語科であり、全国でヤンゴン外国語大学とマンダレー外国語大学のみに設置されている。この日本語学習ブームは、日本の投資や進出企業増加に加え、現地での日本側の活動、日本の就労ビザ緩和、日本製品の質の高さ、日本人観光客増加等の相互作用が原因と考えられ、日本留学や日本企業就職が大きな関心を集めている。そもそも、日本留学は、独立の英雄アウンサン将軍やその娘であるスーチー氏も経験しており、1970〜80年代の軍政時代・経済制裁時代の留学先は西独と日本のみであったため、現在の政府高官や大学幹部には日本政府の元国費外国人留学生が実に多く、強いつながりを保っている。西側諸国が経済制裁を課すなか支援を続けた日本が持つ貴重な人的ネットワークとなっている。 ミャンマーにおける留学希望者の学習言語は英語が1位であり、日本語はそれに続く。ミャンマーからの留学傾向としては、信頼できるデータで正確な確認はできないが、やはり英語圏が多く、アメリカやイギリス、オーストラリアやシンガポールに人気があり、隣国タイも増加中である。オーストラリアとシンガポールは地理的に近く、奨学金や授業料免除も充実していることが要因である。日本は出稼ぎとしてのイメージが強く、他国にはない週28時間までのアルバイト制度が魅力に映るようである。図1は2012〜16年の期間のミャンマーから日本への留学生数の変化を示す。大学や専門学校への留学も増えているが、それ以上に日本語学校への留学の伸びが顕著であることが分かる。1988年から軍事政権の下トップダウンで動いてきたミャンマーの大学は、2011年以降の急激な教育改革により大きな転換点に立っている。多くの法律が制定され、教育政策や制度が続々と作られるなか、大学には自治権が付与されようとしている。しかし、自治権の行使には自由と責任が伴い、自由と責任を担うには様々な能力や資源が不可欠であるが、改革状況を見るに、政策・制度作りが先行し、制度の血となり肉となる大学教員の能力開発・向上に十分な焦点が当てられていない。突然自治を与えられても大学側は右往左往するだけであり、旧来の教育を行ってきた大学教員は、今後の高等教育改革適切な訓練なしには新しいシステムに対応できない。良くも悪しくもこれまでの大学教育の在り方・特徴を踏まえて改革を徐々に行うことが現実的である。民間の調査によれば、ミャンマー経済の牽引役は、現在、農業、インフラ整備、製造業、エネルギー・採鉱の順であるが、2030年までに製造業、農業、インフラ整備、エネルギー・採鉱の順に変化すると予測している。これらの分野に必要な熟練・半熟練・非熟練労働者の不足は現在も起きているが、今後より深刻化すると予測されている。必要とされる熟練・半熟練労働者については、高等教育レベルの人材へのニーズはあまり変化がないが、中等教育により養成される人材は3倍以上必要とされ、逆に小学校卒業レベルの人材のニーズは半減すると予測されている。高等教育の現状から、教育改革を待っていては急拡大する人材ニーズに対処できないのが現状である。このスキルギャップに対応するために民間部門による実践力のある産業人材育成が焦眉の急とされ、ミャンマーへの企業進出が活発なドナー国や進出企業が独自に職業訓練校を設置して育成する動きが活発になってきている。現段階のミャンマーの発展及び将来予測を見れば、高等教育は、伝統的な学問領域に基づく理論中心・暗記中心の受け身型教育から、産業や社会が必要とする人材育成を目指すものへと重点を移行すべきであり、高等教育改革では、通学型大学と遠隔教育大学両方において、産業ニーズに対応できるように職業技術を重視したキャリア教育を位置づける必要性がある。地理的移動が難しいミャンマーにおいては、特に、大学生の3分の2を抱える遠隔教育大学により焦点を当て、ICT環境の整備とともにe-learningの可能性を探ることが喫緊の課題に対応する近道だと考えられる。【主な参考文献】日本学生支援機構(2013. 2014, 2015, 2016, 2017)「平成24年度外国人留学生在籍状況調査結果」(http://www.jasso.go.jp/about/statistics/intl_student_e/index.html)図1 ミャンマーからの日本留学生数推移4,0003,5003,0002,5002,0001,5001,000500020124184056551,1931,1591,5981,9352,7553,8511,2801,6521,1032,0791,7727332013201420152016(年度)留学生数(人)高等教育機関   日本語教育機関   合計出典: 日本学生支援機構(2013、 2014、 2015、 2016、 2017) 「平成24年度外国人留学生在籍状況調査結果」より作成

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