カレッジマネジメント211号
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23リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018年に発足した「アジア太平洋大学交流機構」をはじめ、「アセアン大学ネットワーク」(1995年発足)、2009年にマレーシア・インドネシア・タイの三カ国によって開始され、東南アジア教育大臣機構高等教育開発センターが継承発展させている「アセアン学生モビリティプログラム」、南アジア地域協力連合による「南アジア大学」(2010年発足)さらに日中韓政府による「キャンパス・アジア」(2011年発足)が展開されている。近年ではカンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナム・タイ及び中国の雲南省・広西省を加えた「大メコン圏大学ネットワーク」、さらに、中国が一帯一路構想にそって2017年に展開し始めた「アジア大学アライアンス」も挙げられる。こうした国境を越える教育は、トランスナショナル教育やクロスボーダー教育として総称されてきたが、今日ではその実態が多様化し、ダブルディグリーやジョイントディグリーといった共同学位のほかに、自国と海外と両方で一定期間、教育を受けるツイニングプログラムやサンドイッチプログラム等、様々なモデルが登場している。学生や教職員が移動するだけではなく、プログラムもまた移動しているのである。さらに、教育機関の移動も様々である。カナダの高等教育研究者J.ナイトは、こうした多様な実態を全て「トランスナショナル教育」として一括してしまうことの齟齬を指摘し、「プログラムや教育提供主体の移動(international こうした留学生移動地図の変化には2つの要因が背景として挙げられる。キーワードの概観を図2に示した。第1に、近年さらに活発化している世界各国の留学生政策である。そこでは、かつての友好促進や国際交流といった目的よりも、高度人材育成をめぐる人材獲得という側面がより強く打ち出され、より多くの留学生を獲得することが「教育ハブ」としての国際社会での位置づけを強固にするという方向性が見られる。こうした各国及び各教育機関の競争は、世界の大学のランキング指標によってさらに加速している。こうしたランキング指標は、学生が留学先を決める際の判断基準になっているとともに、各国政府や教育機関もまたランキングにおける位置づけを目に見える指標として強く意識している。第2に、国境を越える教育モデルの多様化である。欧州ではボローニャ・プロセスにより、2020年までに欧州高等教育圏の国々の高等教育修了者のうち、国際的な学習経験を有する者を20%にすることを数値目標に掲げている※5。エラスムス計画も、今ではエラスムス・プラスとして欧州の加盟国外との連携を深めつつある。アジアにおいても、1991留学生移動の多様化を促す留学生政策と国境を越える教育モデル出典:IIE Project Atlas図1 世界の主要留学生受入れ国とその出身国(2017年)世界の留学生はどの国で学ぶのか

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