カレッジマネジメント211号
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26リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018この4年間、アジアのトップ大学のアドミニストレーター達が香港で集まり、ICT利用教育の取り組みに関する情報交換や連携について話し合う小規模な会議に、毎年招かれて参加している。シンガポール国立大学、北京大学、香港大学、香港科技大学、香港中文大学、京都大学、香港理工大学、国立台湾大学等、世界大学ランキングで上位200位以内に入っている大学が中心だが、各大学において日進月歩とも呼べるようなスピード感で進められているICT利用教育の取り組みには、目を見張るものがある。これらのほとんどの大学がedXやCoursera等を通じて、グローバルなMOOC(Massive Open Online Course:大規模公開オンライン講義)を提供しているが、なかでも北京大学では、既に100以上のMOOCを配信しており、少なくとも数量的にはほかのアジアのトップ大学を遙かに引き離し、スタンフォード大学、MIT、ハーバード大学等に迫る勢いを見せている。またMOOCに加え、MOOCと同様のオンライン学習の仕組みを用いて、自大学の学生等に限定してオンライン講義・自習教材を提供するSPOC(Small Private Online Course:小規模非公開オンライン講義)を用いたブレンディッド学習(Blended Learning)や反転学習(Flipped Learning)に力を入れているアジアや世界の大学も増えつつある。10年ほど前までは、大学におけるICTの教育的活用に関しては欧米の大学が圧倒的に進んでおり、アジアの大学の取り組みが注目されることはほぼ皆無だった。しかし、2010年代に入って世界大学ランキングにアジアの大学が次々に台頭するようになり、例えば2018京都大学 理事補(教育担当)/高等教育研究開発推進センター長・教授飯吉 透ブレンディッド化・多様化・個別化が進む未来のICT活用教育●PROFILE 国際基督教大学・同大学院(教育工学)を経て、フロリダ州立大学大学院博士課程修了。Ph.D.(教授システム学)。カーネギー財団上級研究員・同知識メディア研究所所長、東京大学大学院情報学環客員教授、マサチューセッツ工科大学教育イノベーション・テクノロジー局シニアストラテジスト等を経て現職。世界経済フォーラム グローバル・アジェンダ評議会委員(「テクノロジーと教育」部門)、NHK日本賞審査委員等を歴任。国内外でテクノロジーを利用した高等教育の進展に関するビジョン策定・研究開発・啓蒙活動に従事。主著にOpening Up Education(MIT Press, 2008)[共著]、『ウェブで学ぶ – オープンエデュケーションと知の革命』(筑摩書房, 2010)[共著]等。ICT利用教育においても急激に台頭するアジアのトップ大学ICTで高等教育はどう変わるのか寄稿特集 2030年の高等教育

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