カレッジマネジメント211号
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30リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018元ミネルバ大学 日本連絡事務所代表山本秀樹ミネルバ大学(Minerva Schools at KGI)は2014年9月に開校したMinerva Project社とクレアモント大学コンソーシアムに所属するKeck Graduate Instituteとの合弁によって誕生した大学である。その設立プロジェクトはハーバード大学前学長のサマーズ教授等、米国大学の学長経験者らが設立準備委員会のメンバーを務め、既存のエリート大学が抱える様々な課題を解決する大学をゼロから創ってベンチマークとする、という野心的な構想で、約2年の準備期間を経て実現させた。ミネルバ大学が解決を目指している大学の課題とは、1.学生の社会に出るための準備、2.効果的な教授法の活用、3.有意義なグローバル経験、4.学習機会の平等と投資対効果の4点である。大学経営者と学生の就職先となる企業の経営者との間には“学生の社会に出るための準備”について大きな認識差がある。AACUが実施した調査※1によれば、学部生の採用企業の93%は、学生が学んだ専門分野の知識よりも、複雑な問題を分析し、明確な解決法を創り、チームと協力しながら解決に導ける能力のほうが重要だと答えている。しかし、多くの大学は細分化された専門分野を追求し、学部生が実社会で必要とされる技能を提供することに向き合っていない。また、過去に研究論文や実証実験が行われている学習効果の高い教授法は、多くの大学で実践されていない。特に大教室での講義は教える側にとっては最も効率の良い方法であるが、学ぶ側にとっては最も学習効果が低いことがたびたび指摘されている※2が、多くの大学はこの授業形式を続けている。さらに、今日の世界はソーシャルネットワークサービスの普及により、かつてないほどに情報共有範囲が拡大している。LCC(低価格航空会社)の増加により物理的にも人の移動が容易になり、異文化間理解やマイノリティへのコミュニケーションもより柔軟で繊細な配慮が求められる。と未来を先取る新たな大学の形ミネルバ大学寄稿ミネルバ大学とは何か授業中のリアルタイム意思表示:授業中に発言者に対してリアルタイムで意思表示できる(この場合は◯X)仕組みオフラインの活動事例:オフラインでプロジェクト学習の一つであるワークショップ中の学生達発言時間の把握:授業中に誰がどれだけ話しているか、教員が確認できる(緑があまり話していない学生、赤はよく話している学生)

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