カレッジマネジメント211号
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34リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018顕在化しつつある労働力減少という事態を受け、「社会人の学び直し」や留学生受け入れ拡大による人材流動性向上が、喫緊の国家的課題となっている。対処策の一つは職業訓練の拡充であり、また高等教育段階における職業教育体制強化であろう。高等教育段階においては、学校種を超えた職業教育の明確な位置づけと体系化が重要である。目指すべき職業教育体系においては、各分野各教育段階における教育課程の学修成果が、高校生、社会人、留学希望者に分かりやすく、かつ学修成果基準が国際通用性を持ったものでなければならない。本稿ではそのような位置づけと体系化に向けては、「特定の職業のための教育」を職業教育の基本類型とするところから初めて出発できると提唱したい。2005年の中教審答申「我が国の高等教育の将来像」当時、大学新卒無業者数が10万人を超え、大学と社会との接続が問題となっていた。答申は、大学の7つの機能別分化を唱え、「高度専門職業人養成」と「幅広い職業人養成」を大学の職業教育的機能とした。以降、多くの大学がとりわけ「幅広い職業人養成」をミッションとし、社会との接続機能の強化を目指すことになったのである。現在、中教審大学分科会将来構想部会では、再び高等教育全般の中長期の方向性が議論されている。ただし職業教育の位置づけについては、13年前の中教審答申とは異なる状況にある。背景にあるのは、産業界からの「実践的な職業教育の充実への期待の高まり」(将来構想部会「特定の職業のための教育」の現勢「論点整理」2017年12月28日)であり、またこの間における「特定の職業のための教育」の伸張である。そこでまずは「特定の職業ための教育」の現勢を見てみよう。①高校生の進学動向高校生の大学進学への傾斜は依然として強く、職業教育に適した高校生の進路ミスマッチ状況は続いている。しかし一方で「特定の職業のための教育」は各学校種においてその伸張が顕著である。例えば、中核である専門学校は、約60万人の在籍学生数、高校からの進学率16.2%とその勢力を維持。また大学では、高度職業人教育のほかに看護・医療系学部・学科が増大。短大は、総体として学生数減少は顕著ながらも教育分野(幼稚園教諭・保育士)、家政(栄養士)等職業直結型分野の占める割合が拡大傾向にある。②「社会人の学び直し」の現状社会人にとって職業教育機関選択の観点は、学修成果の明確性と有効性である。厚生労働省職業訓練諸制度の支援対象となる課程は高度化・長期化し、高等教育機関の正規課程が支援対象講座に指定される傾向にある。今後、公共職業訓練の委託訓練について、関連予算の動向から見て専門学校や専門職大学院の正規課程が担う割合が急速に高まると思われる。人生100年時代構想会議中間報告(2017年12月)では、リカレント教育(学び直し)の重要性が指摘されている。また未来投資戦略2017には、関連する具体的なKPI(重要業績評価指標)として、以下が挙げられている。全国専修学校各種学校総連合会 常任理事学校法人滋慶学園 東京メディカルスポーツ専門学校 学校長関口正雄労働力減少時代に求められる高等教育段階の職業教育体系整備について職業教育の方向性は特集 2030年の高等教育寄稿

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