カレッジマネジメント211号
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382018年、18歳人口は約10年続いた120万人の踊り場から再び減少に転じ、2030年には100万人へ。さらに減少は加速し、2040年には約80万人にまで縮小すると予測(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(出生中位・死亡中位)」を基にした文部科学省推計)されている。既に人手不足は深刻になりつつあるが、労働力人口のさらなる減少により、多くの分野で人材の確保が難しくなるだろう。社会保障費の増加に歯止めがかからない財政状況を考えると高等教育に投入される公費の縮減も避けられない。一方で、高等教育に対する社会的要請はさらに多様化・高度化し、大学を見る社会の目は一層厳しさを増すだろう。人材や資金など経営資源の確保が難しくなるなか、大学はどのようにしてこれらの要請に応えていけばよいのだろうか。人間は不都合な現実から目を背けるといわれている。未だ経験したことのない困難が目の前に立ちはだかろうとしているにも拘わらず、大学の危機感は総じて薄く、改革への取り組みも緩慢な印象が拭えない。12年後には現実となる近い将来を見据えて、知恵を総動員し、ステークホルダーを巻き込みながら、生き残りの戦略を考え、果敢に実行する。大学に残されている時間はあまりない。見方を変えると、世界に先駆けて少子化と高齢化が急速に進む課題先進国日本には、世界の研究と教育をリードするに十分な社会的ニーズがあふれているともいえる。昭和46年6月中央教育審議会答申(所謂「四六答申」)は、学問研究の自由に対する保障は、大学が社会に貢献するための基本的条件としたうえで、「大学は、進んで歴史的・社会的な現実に直面し、そこから研究と教育を発展させる創造的な契機をくみとることができるような社会との新しい関係を作ることによって、その社会的役割を十分に果たすことに努めるべきであろう」と述べている。大学にとって未曾有の危機は、自らの存在を問い直す好機でもある。大学は立ち止まっている訳ではない。ガバナンス改革、教育改革、入試改革など「改革」の名の下に、様々な取り組みが進んでいる。国も矢継ぎ早に政策を示し、それを強く促している。改革疲れが指摘されるほどに、改革は盛んに行われているともいえる。大切なことは、改革が自己目的化することのないよう、改革によってどのような組織を創り上げたいのか、目指す姿を明らかにすることである。具体的な姿は大学ごとに異なって当然だが、大学が等しく目指すべきだと考えるのは、「自由と伝統を守りながら、自己革新を持続させることのできる組織」の確立である。日本は創業200年を超える長寿企業が世界でも突出して多いことが知られている。これらの企業に共通するのは、伝統を受け継ぎつつ、時代の変化を先取りする適応力である。自由と伝統を守りながら自己革新を持続させるリクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018公立大学法人首都大学東京 理事吉武博通2030年を見据えた大学マネジメント改革──自己革新が持続する組織の確立に向けて未曾有の危機は自らの存在を問い直す好機でもある大学を強くする「大学経営改革」〈特別編〉特集 2030年の高等教育

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