カレッジマネジメント211号
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44リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018みである。田中総長は2014年4月の就任後、スーパーグローバル大学創成支援事業申請(同年5月)が一段落すると、早速7月からHOSEI 2030の策定に入った。そのプロセスは図表2にある通り、①構想策定(2014-15年度)→②アクション・プラン作成(2016年度)→③アクション・プラン実施(2017年度~)の3段階で進められた。2014年度から2015年度にかけての2年間は、長期ビジョンの全体構想が検討された段階だ。2014年7月、理事会によって、田中総長を委員長とする「HOSEI 2030策定委員会」が企画・戦略本部内に設置され、その下に①財政基盤確立、②教学改革とキャンパス再構築、③ダイバーシティ化推進、④ブランディングをテーマとする委員会が置かれた(図表3)。委員には常務理事、学外理事(オブザーバー)の他、2030年に在職予定年代を中心にした教職員が就いた。それにしても、長期ビジョンを構成する4つの大テーマはどのように抽出されたのか。多くの場合、大学の中長期ビジョンは教育・研究・社会貢献といったあらゆる領域を網羅する形で策定される。しかし法政の場合は、多くの関係者が共通に感じていた「課題」を基に絞り込んでいったものだと、平塚眞樹総長室長(社会学部教授)は説明する。厳選した課題に取り組むことで既存の制度を大きく変えていくことを目指したのだという。だから、長期ビジョンに数値目標はほとんど使っていない。制度転換の後にこそ数値目標が意味を持つというのが基本姿勢だ。こうして、2年間にわたる検討結果は、2016年4月に「HOSEI 2030最終報告」としてまとめられた。同時に、学内での議論は、社会に向けた「約束」を示す法政大学憲章「自由を生き抜く実践知」(2016年2月)や法政大学ダイバーシティ宣言(同年6月)の制定に至っている。続く2016年度は次の段階として具体的なアクション・プラン作成が進められた。策定委員会の下に16の具体的テーマに関する作業部会が設置され、実際に推進していく活動が明確化されていった。各委員会には構想策定と合わせ、必ずロードマップも作成してもらった、と田中総長は語る。そして2017年3月には「HOSEI 2030アクション・プラン報告」が出された。2017年度からは、本格的にプランを実行に移す段階に入った。そのための総括組織として「HOSEI 2030推進本部」が発足し、具体的な取り組みが始まっている。特に、財政基盤確立に関して4年間の「中期経営計画」が策定され、アクション・プラン具体化の財政的裏付けがなされている点は重要だ。精神論だけでは大学改革が進まないことの証左だ。このように、法政が約3年間をかけ、極めて実効性の高い形でビジョンとプランの策定を進めてきたこと、現在それを着実に行動に移しつつあることは間違いない。ただ、その裏には、学内における丹念な課題共有の機会創出や活発なコミュニケーションのプロセスがあったことを強調しておきたい。図表3 HOSEI 2030検討体制概念図(2014-2015年度)策定委員会の検討領域策定委員会の検討領域ブランディング戦略会議HOSEI 2030 策定委員会ダイバーシティ化委員会キャンパス再構築委員会財政基盤検討委員会理念・目標領域 施策展開領域 基盤領域教育・研究・貢献の長期ビジョン・目標財政基盤検討人的環境:ダイバーシティ化物的環境:キャンパス再構築学部・研究科・研究センター教育課程・プログラム部署の独自性を尊重しながら、長期ビジョンに沿って、目標実現の施策を実施する長期ビジョンを実現するために必要な人的・物的環境を検討する各セクションの施策を進める前提として、ビジョン実現のための財政状況を検討する大学のミッションを基に、2030年の「あるべき姿」を設定する大学のミッション改革推進の鍵は学内コミュニケーション
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