カレッジマネジメント211号
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46これまで一度も「道」の上を通ったことがないという読者諸氏はまずいらっしゃらないことだろう。では、その、通った「道」を作った人のことを思ったことはあるだろうか。本稿はそうした物語である。今回取り上げるのは京都産業大学(以下、京産大)である。京産大は、京都・上賀茂、神山(こうやま)の地にキャンパスを置く、2018年4月現在で9学部8研究科、学生数は総勢13,000人を数える私立大学で、京都の雄であり、今変化の途上にある。この4月には、情報理工学部が設置された。来る2019年度には国際関係学部、生命科学部、経営学部の設置・改組再編が予定されている。京産大が本誌に登場するのは147号(2007年)、187号(2014年)、194号(2015年)、そして、前号の210号(2018年)に続いてのことであり、本誌の熱心な読者にとって馴染みが深い大学のひとつであろう。147号では「グランドデザインの推進を目指したブランディング戦略」が取り上げられたが、本稿は当時の『グランドデザイン』の後継である『神山STYLE 2030』と、それに基づく様々な改革について取り上げたい。『神山STYLE 2030』そのものもさることながら、プラン策定の裏にあるものは何だったのかを伺うべく、大城光正学長を神山の地に訪ねた。京産大創立50周年であった2015年に、大学の在り方を示した『グランドデザイン』がその役割を終えた。創立50周年を機に、創立100周年に向けて新たな大学像を示そグランドデザインの後継『神山STYLE 2030』うと、次期計画の検討が始まった。1965年の創立時や、建学の精神に立ち返りつつ、人口減による厳しい環境が待ち構えている次の50年を見据えて、これからの15年を大学がいかに進むべきか。京産大に集う教職員からの意見や提案を基に、この時期における大学全体の在り方を『神山STYLE 2030』としてまとめあげた(図1)。同時に大学のブランディングメッセージやロゴも変更している。2030年代初頭には18歳人口が100万を切ると予想されていることからも、2030年までの15年間は重要な時期として意識されていた。『神山STYLE 2030』そのものの策定は、2015年の2月頃に始まった。「新グランドデザイン検討委員会」には、常任理事や学部長、事務部門の長が理事長のもとに結集した(図2)。この検討委員会の下に設けられた「教育・学生支援」、「研究改革」、「社会貢献・地域連携・ステークホルダー連携」の3つの作業部会は3名の副学長(理事兼任)がリードすることとなった。「組織・人事戦略」、「財務戦略」、「広報戦略」、「キャンパス計画」といった管理運営上の課題については副学長や職員出身理事が受け持った。副学長・各理事のもとに教職員が集うかたちで、各課題の検討がなされた。前述の通り、改革課題は法人と教学の双方に跨がっている。そのため、検討委員会及び作業部会にも法人・教学を問わず人が出ており、いわば総力戦であったという。2015年の春先から半年ほどの間に、二桁を超える会議を重ね、『神山STYLE 2030』として結実したのは9月下旬リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018先を見据えた組織づくりによって、オンリーワンを目指す大城光正学長< 神山STYLE 2030 >京都産業大学C A S E2
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