カレッジマネジメント211号
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47である。こうした関係者の並々ならぬ努力があって、『神山STYLE 2030』は11月の創立50周年記念式典における公表にこぎ着けたのである。さて、筆者はお詫びをしなければならないことをここで正直に白状したい。『神山STYLE 2030』を初めて見たとき、極めて大綱的で、かつ内容も穏当なものであると感じた(それはそれで重要なことだが)。誤解を恐れずに言えば、ありふれたプランであるようにも映ったのだが、大城学長の話を聞き、その認識は完全に改まった。『神山STYLE 2030』はある意味で白眉である。そして白眉である理由は、その大綱的なプランの裏に隠された、緻密な進め方にある。2030年までという長いスパンを見越して、『神山STYLE 2030』を受けた改革のロードマップは3期に分かれている。2016年度から20年度までの「改革期」、21年度から25年度までの「発展期」、26年度から30年度までの「充実期」である。こうした期間の趣旨も踏まえつつ、達成すべきアクション・プランが設定されている。以前の『グランドデザイン』の時は68のアクション・プランが設定されていた(本誌147号参照)が、今回設定されたアクション・プランは89に上る。アクション・プランに基づき、主管する部署が達成すべき目標と達成に要する期間や、プランの達成を検証するための定量的指標や定性的指標を自ら設定する。各プランを達成する責任者も明記される。アクション・プランは大項目、中項目、小項目と階層化、構造化されており、設定されている指標総数は350を超える。大綱的な『神山STYLE 2030』はその表面に過ぎなかったのである。また、こうして設定されたアクション・プランは、その進捗について検証を受けることが定められている(図3)。各部署の進捗確認の結果の中から、毎年開かれる検証会議、及び、検証会議小委員会でその時々において取り上げるべき項目を抽出し、進捗を確認している。こうした計画や戦略の類いは「立てて終わり」になってしまうケースも耳にすることがあるが、そうした「計画倒れ」を防ぐ仕組みも備わっている。89のアクション・プランは、それぞれ独自に設定されたスパンで進むため、まだ達成時期が来ていないものの方が多いが、中には成果が見えてきているものもある。この『神山STYLE 2030』が奏功したことで得られた成果のひとつは、新学部の設置と校舎の建替がシナジーをもって進み、早期の達成が見込めることになったことである。開学から50年経ち、建物の老朽化と耐震対応が課題として生じてきていた。と同時に、学生のニーズを踏まえた新学部設置による学生数の増加も見込まれた。学生数の増加に対応する教室・学習環境整備はもとより「学生の安全・安心のことを考えたら、整備を主として考えていかなければならない。だから前倒しで建物を建て、新学部(の設置)もスピードを以て達成している」(大城学長)。結果的に、『神山STYLE 2030』でも掲げられている「学生数15,000人」という規模の拡大は、当初計画よりも早いタイミングである2023年での達成が見込まれている。もう少し改革の成果について見てみよう。『神山STYLE 2030』にある「1.社会的ニーズに呼応した、学部学科の新設と積極的再編」の例として、情報理工学部、経営学部に少しフォーカスしたい。前者はコンピュータ理工学部3学科から1学部1学科に改組された。後者も3学科から1学科への改組を予定している。いずれの学部も改組前は学部一括で入試をしており、学科には2年次で分属という体制であったが、こうした仕組みにより、配属募集面で早くも見え始めた改革の成果リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018事例②図1 「神山STYLE 2030」の概念図大学組織・人事戦略、財政戦略、広報戦略、キャンパス計画強固な基盤いかなる時代においても、社会から求められる高度な人材を育成ニーズを先取りした研究推進のための、多様な研究者の育成と環境整備地域・社会と共生し、大学価値の向上教育学生支援研究改革社会貢献地域連携ステークホルダー連携3つの柱と強固な基盤づくり特集 2030年の高等教育

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