カレッジマネジメント211号
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51ることで、その具体化を図っていく。現在、法令上作成する必要があるものは単年度の事業計画書・事業報告書であるが、これを長期経営計画と中期計画とに関連づけることによって、これらの計画の単年度の定期的な検証も組み込み、長期経営計画・中期計画・単年度の事業計画という3段階の計画に基づいて、10年後に目指したビジョンを実現するためのマネジメントを実質化していくのである。そのため、長期経営計画はビジョンを示すものとして位置づけて数値目標はあえて設定せず、4年単位の中期計画において数値目標を含めた具体的な到達目標を設定することとされている。このような計画的な大学運営体制を整備するため、2017年度中に長期経営計画を策定するスケジュールで進めてきた(ただし、当初の予定よりも少し時間がかかっており、2018年5月の評議員会及び6月の理事会での審議を経て、決定される見込みとなっている)。そして、2018年度中に第1次中期計画を策定していく予定とされている。長期経営計画の策定は「常務理事会」を中心に進められてきた(図2)。常務理事会は、理事長及び常務理事(事務局長理事、副学長の最年長者理事、評議員選出理事の3名からなる会議体であり、「理事会」が大きな方針を議論・決定することに対して、日常的な業務執行を担当するために法人に置かれている常設組織である。そして、計画策定を具体的に進めるために、理事長直属の機関として常務理事、副学長、理事長補佐、学長補佐等による「中長期経営計画検討プロジェクトチーム」を設置し、常務理事会に提出する具体的な内容・項目の検討を進めてきた。事務局としての取りまとめは、経営企画部(職員数6名)が担当しており、財務のシミュレーションを行う等、実務的な作業も担当している。そして、計画策定後には、教学面の意思決定機関として大学に置かれている「教学会議」(学長、副学長、各学部長、各学部選出の委員、教務委員長・入試委員長・学生委員長、キャリアセンター長、各研究科長、教務部長及び短期大学長から構成)を通じて、その内容を学内で周知していく予定であり、法人の常務理事会、大学の教学会議という経営と教学の両側面から、経営計画を立案・実施していく体制となっている。このような策定・実行プロセスについて、「法人が強いリーダーシップを取って進めていくやり方は、松山大学にはあまり合わない。法人は大きくビジョンを示して、教学でその具体的な内容を検討していくのが良い」と新井常務理事は話す。伝統ある大学として、松山大学にふさわしいガバナンスを工夫しながら、実効性のある計画策定が目指されているのである。松山大学の長期経営計画「MATSUDAI VISION 2027」は、大学全体として10年後に目指す大きな方向性をビジョンとして示したうえで、現状を分析し、取り組むべき課題を提示するという構成となっている。具体的には、学校法課題と強みを踏まえた10の基本戦略リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 20182018201920202021202220232024202520262027松山大学創立100周年次代を切り拓く「知」の拠点VISION第1次中期計画 策定10の基本戦略(後述)をそれぞれ担当部署に落とし込み、中期計画を策定し、戦略的に実行する第1次中期計画 検証担当部署に落とし込んだ基本戦略が、計画的に実施され、成果を上げられているか検証を行う第2次中期計画 策定第1次中期計画の検証結果を踏まえ、第2次中期計画を見直し、VISION実現に向け実行する第1次中期計画 実行第2次中期計画 実行図1 第1次長期経営計画 工程表図2 学校法人松山大学 長期経営計画・中期計画策定体制学校法人松山大学中長期経営計画検討プロジェクトチーム常務理事会理事会特集 2030年の高等教育事例③

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