カレッジマネジメント211号
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52リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018人全体の2027年にあるべき姿として「次代を切り拓く『知』の拠点」と明確に定めたうえで、「使命と目標」「現状と将来の見通し」「基本戦略」の3部構成で作成されている。「使命と目標」では、校訓「三実」を始めとする建学の背景と理念、大学の歴史的経過、事業領域とその特性を確認し、「現状と将来の見通し」において、18歳人口の減少等のマクロ環境の変化と松山大学の入学志願者数の推移と就職状況の動向が検証されている。その上で、松山大学の「強み」を「教育」、「学生支援」、「社会連携・地域貢献」の3つの観点から整理するとともに、「興味・関心を引き出すカリキュラムと入学広報」、「多様な背景を持つ学生に対する入試対応」、「全学的マネジメント体制の再構築」の3つの「課題」を指摘する。ここで示されている課題を具体的に見ると、「興味・関心を引き出すカリキュラムと入学広報」においては、伝統的学部構成によって安定的な学問体系を提供していることが、受験生の積極的な関心を引き出すことに欠ける要因となっているため、アピールポイントの明確化と入学広報における積極的な発信を課題としている。また「多様な背景を持つ学生に対する入試対応」では、国が進めている高大接続改革への対応の必要性を指摘。さらに「全学的マネジメント体制の再構築」においては、教学組織と事務組織が自律的に運営されているという「強み」を持つ一方で、それらを統括する全学的なマネジメント体制が構築されていないことやIRの充実等を課題としている。これらの課題分析は伝統大学としての特徴を客観的に分析するものであり、伝統校としての強みが内包する組織的課題を冷静に見据えるものとなっている。そして、これらの「強み」と「課題」を踏まえて、「内部質保証」「教育活動」「研究活動」「国際化」「入学広報」「学生支援」「キャリア教育・支援」「卒業生連携」「社会連携」「管理・運営」の10の項目による基本戦略が示されている(図3)。「内部質保証」を最初の項目に置く10項目の基本戦略は、ビジョンを実現するために取り組むべき課題の方向性を示したものである。これらの項目の設定にあたっては、文部科学省の私立大学改革総合支援事業の項目や認証評価の動向等を参考にするとともに、学生への役割としての教育、研究をどのように充実させるかという大学の内部の活動だけでなく、大学と外部との接点であり入口と出口となる入学と卒業、そして、7万5000人の卒業生との連携という観点も重視して検討するなかで、組織全体の活動についての内部質保証が最も重要であろうということから、それを最初に位置づけることとした。そして、プロジェクトチームにおいて各項目を一つひとつ検討して、全体を積み上げてきたという。その具体化のプロセスでは、例えば、校1.内部質保証を担保2.教育活動を時代の変化に適応3.研究活動の強化と発信4.国際化に対応する人材養成5.入学広報の強化と拡充1.アセスメント・ポリシーの確立2.教育の質保証に向けたIR機能の強化3.学修成果の可視化と情報公開1.ディプロマ・ポリシーに整合する教育課程の体系、教育内容、授業科目区分等に関するPDCAサイクルの確立2.実践的なカリキュラムの恒常的な構築3.主体的な学習意欲・態度を刺激するための制度の導入4.多様な研究を生かした専門教育の提供5.教育改革に資する特長的な取組に対する支援制度の導入1.研究成果の社会への発信強化2.研究支援体制の整備・強化3.次代を担う若手研究者への支援4.外部競争的資金の獲得に向けた支援体制の強化1.グローカル人材の養成のための教育基盤の強化2.実践的な語学修得の機会の提供3.異文化交流プログラムの実施体制の構築4.国際化に向けた組織・体制整備1.ブランド力の強化2.広報戦略の見直し3.進学説明会、出張講義、オープンキャンパス等の強化・拡充4.多様な背景を持つ学生に対する入試制度の構築6.学生支援の体制の構築7.キャリア教育・支援の充実8.卒業生連携の強化9.社会連携による人材養成10.管理・運営の基盤整備1.学習及び生活環境のサポート体制の充実2.安全安心な学生生活支援の充実3.保健管理に係る環境整備4.社会環境の変化に応じた奨学金による経済的支援1.キャリア教育に対する全学的取組の強化2.学生のステージに応じたキャリア支援体制の構築3.キャリア教育科目の整備とサポート体制の充実4.キャリアセンタースタッフの質的強化1.卒業生からの資金面における支援体制の充実2.卒業生と在学生との関係強化3.温山会組織を通じた卒業生の追跡調査1.社会の課題に対応するプロジェクトの推進や問題解決型授業の開発・実践2.連携協定に基づくキャリア教育プログラム及びインターンシップ・プログラムの開発3.本学の知的資産を生かしたリカレント教育の提供4.地域における他大学との連携強化1. 全学的マネジメント体制の整備2. 財政基盤の強化3. 事務組織の改編4. 人事方針及び研修制度の見直し5. 危機管理体制の強化図3 MATSUDAI VISION 10の戦略

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