カレッジマネジメント211号
58/78
58リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018付加価値の高い人材」の育成である。例えば、同じ看護師でも、大学院に進学し管理職まで目指す看護師、英語ができて外国人に対応できる看護師、あるいは、ホスピタリティにあふれる看護師、すべて個性は異なる。その際には、大学の特色や個性をどこまで徹底できるかが差別化のポイントとなる。・フォロワーの戦略最後は、規模にかかわらず、延べ志願倍率が3倍を切っているセグメントである。マーケティング上では「フォロワー」と呼ばれており、今後の人口減少を考えると、「淘汰予備軍」とも言えるポジションである。学生募集面では、専門学校と競合するケースが多くなってくる。このセグメントでは、まず本学では、正課・正課外を通じてどのような学びや経験ができるのか、そして卒業するとどうなれるのか、といった学生目線の改革が必要である。設立の経緯や地域の状況によっては、公立化を視野に入れることも選択肢のひとつとなろう。いずれにしても、学外の声をしっかり受け止めて、荒療治を含めた改革の徹底が必要になる。その際、意思決定のスピードが重要になるため、トップの強いリーダーシップが求められる。また、セグメントを問わず、社会人の学び直し(学び重ね)支援は重要な位置づけとなる。「人生100年時代」を迎え、これまでのように人生が「学ぶ時期、働く時期、老後」という3つのステージに分かれるのではなく、「学ぶと働くが互いに行き来する」人生に変わっていくと言われている。しかし現在、社会人の学びの多くは大学以外で行われている。今後は、いかに社会人が大学・大学院で学びやすい環境を整備していくかを考えなければならない。これは大学の生き残りのためということだけではなく、知識基盤社会を支える高等教育機関としての大きな役割となるだろう。さらに、2030年に向けては、ICTを活用しての教育は大きな可能性を秘めている。様々な分野でICT・AI活用が進められ、金融ではFin Tech、人材ではHR Teck、そして教育ではEd-Techという形に進化している。リアルとオンラインを融合したブレンディッド教育・学習も拡がっていくだろう。今回、事例では固定のキャンパスを持たずにオンラインで教育を行い、世界中をキャンパスとするミネルバ大学を取り上げたが、これからこのような新しい形の大学が、時間と場所、さらには国境を越えた形で出現することが想定される。図3 「本学ならではの価値」を活かす経営戦略● どんな人材を輩出したいのか?● どんな教育をしたいのか?● どのような目標を設定するのか?● 今後の社会で求められることは?● 地域社会で求められるものは?● 募集対象は誰で、ニーズは何か?● どのような特色があるのか?● 活かせる資源は?● 特色のある制度は?● 競合校はどこか?● 競合校と比較して魅力的?● 本学独自のものか?● なぜ本学は設立されたのか? (建学の精神)● 何が大切なのか?● 何にこだわるのか?社会環境の変化マーケット・ニーズ把握ベンチマーク校比較教育の理念(ミッション)学校資本(リソース)教育目標(ビジョン)競合優位な独自性(個性・特徴)本学ならではの価値中長期目標・戦略・計画事業目標・戦略・計画PDCAサイクルに!社会人教育の推進とICTの活用
元のページ
../index.html#58