カレッジマネジメント211号
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60リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 20182018年3月より、学校法人京都学園の理事長に就任しました。実はもともと、2025年にモータ工学の単科大学を作ろうとしていました。今後、モータの需要が爆発的に伸びるにも拘わらず、モータの研究者、技術者が世界的に足りないためです。世の中が変わり、半導体や情報等の華々しい学科が出てきて、モータを学ぶ学生がいなくなりました。実際、弊社の今年の新卒採用者も、モータの専攻者はゼロです。しかし今後は、モータが「産業の米」になります。EV(電気自動車)もロボットもドローンも、全てモータで動いています。1980年までは鉄、それ以降は半導体だった産業の米が、2025〜30年にはモータに代わるでしょう。欲しい人材と教育には、タイムラグが生じます。実際、鉄の頃は半導体の人材が足りませんでした。そこで3年前に私財で永守財団を設立し、モータの研究者に研究補助金を支援する一方、大学新設に向けた調査を開始したのですが、大学をいちから作るのは大変だと悩んでいたとき、京都学園大学から声を掛けてもらえたのです。経営者から見ると、日本の大学は企業が欲しい人材を輩出できていません。有名大学を出ているのに英語を話せない。日本電産(以下、弊社)は世界43カ国に拠点があり、2030年には75カ国に工場を造る予定ですが、共通語である英語を話せなければ、グローバルな仕事はできません。また、専門を学んだのに実戦力には程遠い。例えば経済経営学部を出ても、貸借対照表も損益計算書も理解できない。我が国の企業の99%超が中小企業なのに、中小企業経営を学んでいないからです。これは本来、大学で学んできて欲しいことで、それが即戦力ということです。大学はここまで教えたので、続きは企業、という接続が成り立ってくれないと困ります。経営者として常々問題視していたことを解決できる時が来ました。また、本学では、英語が話せる即戦力を育てたいと思っています。さらに、偏差値教育が日本の若者の活力をだめにしています。本学はノーベル賞を取るような人材を育てる大学ではなく、「企業、社会が必要としている人材」を育てる大学です。若者は偏差値教育より人間教育が重要で、教育次第で激変します。弊社も昔から大学名をながもり・しげのぶ氏1944年京都府生まれ。1973年に28歳で日本電産を設立。300社を越える連結企業グループに成長させ、世界No.1の総合モーターメーカーに育て上げた。2006年、米バロンズ誌により「世界のベストCEO30人」の一人に選出。2014年、日経ビジネス誌が初めて実施した「社長が選ぶベスト社長」で1位に選出。2015年、全国発明表彰において「文部科学大臣発明賞 発明実施功績賞」を受賞。2018年3月、学校法人京都学園の理事長に就任。実践的な学びと、英語教育で即戦力を育てる大学学校法人京都学園 理事長永守 重信
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