カレッジマネジメント211号
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65で入学可能なオープン大学2校、教員養成カレッジを前身とし1990年代に総合大学へと昇格したラチャパット地域総合大学38校、2005年に工科学校から大学へと統廃合されたラチャモンコン工科大学9校が含まれている。1971年に設置され、タイ各地に学習サテライトが点在するラムカムヘン大学と、東南アジア初の通信制大学として1978年に認可されたスコータイ・タマティラート大学は、オープン大学として高等教育需要をまかなう役割を果たしてきた。2015年現在のオープン大学在籍者数は、36万9184人であり、高等教育在籍者全体の17.8%を占める。また、地域の教育振興を目的に、地域の職業に根ざしたカリキュラムが提供され、準学士を授与するコミュニティ・カレッジも、地域における高等教育ニーズの受け皿として役割が期待されている。一方、私立大学の在籍者数は、31万3273人(15.1%)であり、国立と比べて割合は低い(図1参照)。このような高等教育機関拡充の流れを経て、タイの高等教育において、量的な発展は十分に達成したものと評価されている。タイにおける高等教育学齢人口(18-21歳)は、2016年現在、381万9215人である。うち、学士以下の高等教育在籍者は187万6539人であり、在籍率は49.13%に到達している。なお、プラユット暫定首相は、2016年6月に、幼稚園から高等学校卒業程度までの15年間の学費を無償にする決定を行った。この15年無償教育の実現により、今後高等教育へのアクセスがより進むことが見込まれる。一方、今後、タイにおいては、他のASEAN諸国に先駆けて少子高齢化が進むことが予測されている。高齢化率が14%を超えると「高齢社会」と定義されるが、世界銀行の推計によるとタイでは、2022年に高齢社会に突入すると予測されている。こうした状況を受けて、タイの高等教育は量的拡充から、以下に述べるような、質に関わる様々な問題に取り組んでいく必要に迫られることとなった。質の保証については、1999年の国家教育法の規定に基づき、初の第三者評価の実施主体として、2000年に国家教育水準・質評価局(ONESQA: Oce for National Education Standards and Quality Assessment)が設置された。ONESQAは、大学のみならずタイにおける教育機関の質を高めることを目的に、公正な評価を行うために独立した組織として設けられている。第三者評価に関しては、実施主体をONESQAとすること、評価の周期を5年に一度とすること、評価基準を満たしていない場合には、改善勧告を行うこと、等が基本的事項として定められている。さらに、これまで述べたように、タイにおける高等教育は、量的拡充の段階を終え、「タイランド4.0」を支える高度な人材を輩出することを目指し、質の保証を達成しようと模索している段階にある。例えば、「第2次長期高等教育計画(2008〜2022年)」においては、高等教育の質に関わる問題解決に焦点が当てられ、その方策の一つとして既存の高等教育機関を機能別に分類し、各分類に応じた高等教育の発展と評価の仕組みを設けることが提言された。この提言を受け、高等教育機関は、①コミュニティ・カレッジ、②学士教育中心の文系大学、③理系・特定領域に特化した学士・大学院レベルの大学、④大学院に重点を置く研究中心の大学、の4つに分類されることとなった。また、2009年10月にASEANの中核学習センター構築を目指し、9つの国立大学(タマサート、チュラーロンコン、カセサート、コンケン、チェンマイ、マヒドン、キングモンクット工科トンブリ、スラナリー工科、プリンス・オブ・ソンクラー)が研究拠点大学(NRU: National Research University)として選定され、重点予算配分を受けることとなった。こうした措置は、AECをにらみ、高等教育の質の向上が急務になったことを示唆している。具体的にNRU構想においては、世界大学ランキングにランク入りすること、ASEANの教育ハブとしての水準を満たすこと、産業界との連携により研究高等教育の質の保証に向けてリクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018図1 タイにおける高等教育機関別在籍者数(2015年現在)(n=2,068,346) 出典:The Oce of the Higher Education Commission (OHEC), Ministry of Education (MOE) (2017). Annual Report 2016 Oce of the Higher Education Commission. Bangkok: OHEC, p. 222.※ここでの在籍者数は18~21歳人口以外も含むため、本文の高等教育在籍者数と一致していない。私立大学313,273(15.1%)国立コミュニティ・カレッジ14,520(0.7%)国立オープン大学369,184(17.8%)国立大学1,371,369(66.3%)

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