カレッジマネジメント211号
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68リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングといった座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長及び改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索する中、様々な取り組み事例を積極的に紹介していきたい。今回は、薬剤師養成の6年制課程でありつつ、薬学の多様な進路を意識した人材育成を目指す京都薬科大学で、後藤直正学長にお話をうかがった。前身を含め約130年の歴史を持つ京都薬科大学。後藤直正学長は「科学研究をベースにした教育が本学の伝統であり特徴だと思います」と言う。本当の基礎力を身につけた学生の育成を目指す私立大学の薬学部は、薬剤師国家試験対策や即戦力育成に力を入れるところが多い。しかし後藤学長はそれを「体ができていない人にユニフォームを着せて試合に出しているようなもの」と見ている。「本学の場合は体を鍛えて、野球で言ったらバットの素振りも守備練習もする、汗をかいたところで初めてユニフォームを着せて試合に出す。大学教育とは何かということを捉えたときに、職業教育はしたくない。本当に基礎力を身につけた学生の育成を目指していれば、病院・薬局だけでなく、企業でも行政でも、どんな現場でも活躍できる人材を出していけると考えています」。薬学6年制課程の設置がスタートした2006年以降、6年制で育成するのは現場の薬剤師、4年制は大学院に進んで研究者という性格づけがされている。国公立を中心に6年制・4年制を併設する薬学部もある中、京都薬科大学は6年制課程に一本化した。しかしそれは、薬剤師教育への一本化を意味してはいない。「薬剤師も研究者も、両方育成すると掲げ、実行してきました。4年制の時代は企業志向が強く、企業、行政、大学に行ける人材を出すことを王道としていましたが、6年制移行後、現場の薬剤師の育成にも目を向けて、軌道修正したのも事実です。薬剤師免許は取りましょう、ただそれは最終目的じゃない、通過点だ。その通過点を越えたもう少し上の人材を育成しましょうというのが、掲げてきたことです」。「もう少し上」として目指している人材像が「ファーマシスト・サイエンティスト」だ。「決して薬剤師と研究科学者を引っ付けた言葉ではありません。サイエンス=科学、アート=技術、ヒューマニティ=人間性、の3つのバランスの取れた人をいいます」(後藤学長)。「科学研究をベースにしたファーマシスト・サイエンティストの育成」の具体的な取り組みとして、最も特徴的なものが、3年次の後期に始まり6年次の英語による卒業研究発表会京都薬科大学科学研究をベースとした「ファーマシスト・サイエンティスト」を育成後藤直正 学長

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