カレッジマネジメント211号
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会を設定し、様々な部署の若手職員も加わりながら、学生にとって最も良い学びの環境について何度も会合を重ね熟考した。建設作業は、通常通りに授業が行われる中で進められたため、「建設車両の入退行における安全性の担保や工事作業で発生する騒音への理解に気を砕いた」と、管財部管財課課長・峰田典子氏は話す。課題を乗り越えて完成した建物は、地下1階から地上9階までの全館にわたり、当初の目的通りに「学びやすさと居心地の良さ」を具現化した。1階正面を入ると広々とした学生食堂があり、取材時にも学生達が語らう声で活気づいていた。2階から9階までの各階にある教場は、最大400名の講義が行えるサイズから、可動式の机を配しアクティブラーニングやグループワークに適した40名規模の教室まであり、多様な学びに対応できる。4階には、パソコンやプリンター、ホワイトボード等の機器・設備が取り揃えられた「情報グループ学習室」があり、ゼミ学習や個人のプレゼンテーションの練習等に利用できるようになっている。また、ラウンジスペースが全階に設けられ、鮮やかな色彩でスタイリッシュな椅子やソファーが各フロアを特徴づけている。この種月館は、学習やキャンパスライフの充実だけに留まらない先進的な対応が為されている。その一つが、省CO2実現への取り組みであり、風・光・熱等の自然エネルギーを活用し、エネルギー管理の最適化を図る等の計画により、平成26年度の国土交通省「住宅・建築物省CO2先導事業」に採択されている。さらには、「東日本大震災後の建設計画なので、防災の拠点ということもかなり意識した。校舎自体の免震機能をはじめ、防災センターのような機能を想定した防災庫(第二期工事に予定)を完備し、帰宅困難になってしまった学生の居場所を確保する」(前出・川合氏)と、万全の態勢について語る。落ち着いた趣の外観、寛ぎと活気がバランスする建物内、そしてエネルギー対策や防災面での安心感も備え、様々な顔を見せる新校舎である。(文/金剛寺 千鶴子)緑多い東京・世田谷の地にある駒澤大学は、2012年に開校130年を迎え、その記念棟として2018年4月、新校舎「種月館」の供用を開始した。その名は禅語の「耕雲種月」(耕雲とは雲の下で耕すことで、種月は月の照らす中で植えること。あわせて苦労を厭わず耕作して種をまく、つまり修行に精進すること)に由来し、禅文化を受け止め、学修・研究・業務に励む場となるようにとの意味が込められている。1928年、学内に図書館として建設され、現在は東京都歴史的建造物に選定されている「耕雲館」と隣接している。「学生の新しい時代の学びにふさわしい環境を作るとともに、食堂等を含めた厚生施設も整え充実した学生生活をこのキャンパス内で送ってほしい、という目的を叶えるために建設を決断した」と、管財部部長・川合竜一氏は2012年当時を振り返る。建築内容の検討は、全学部長や職員によって組織された建設委員会を中心に行い、設計の変更等についても、委員会を通じて決定された。また建設委員会の下にテーマごとの分科76リクルート カレッジマネジメント211 / Jul. - Aug. 2018パソコンやプリンター、プロジェクター、ホワイトボード等の機器が整う情報グループ学習室は、ゼミやグループワークでの活用を想定した広いスペース。隣には情報自習室も。
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