カレッジマネジメント212号
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41れをとっても、大きく実績を伸ばした。わずか4年の間に、受入留学生数は10倍、日本人の海外派遣数は8倍に伸びている。また、芝浦工大では多様性の重視を掲げているが、その点では、グローバル化だけでなく、女性の獲得にも力を入れている。2013年度には文部科学省の「女性研究者研究活動支援事業」を獲得し3年間実施したが、採択13機関のうち、唯一のS評価を獲得している。2015年には東京都の女性活躍推進大賞を受賞した(工学系分野の平均の女性教員割合は3.5%。芝浦工大の場合は当時12%)。2017年5月時点の学部女子学生数は、4年生267名、3年生292名、2年生310名、1年生385名で、女子学生数が近年急速に増えており、女子学生の獲得が志願者増の一因にもなっていることが推察できる。こうした着実でスピーディーな改革を下支えしているのがガバナンス改革である。2010年6月に就任した五十嵐久也理事長が、同年10月理事会に「ガバナンス検討委員会」を設置したのをきっかけに、進んできた。中央教育審議会組織運営部会で大学のガバナンスの議論が始まったのは2013年6月であり、政策的な議論より先行した改革であった。図表3には、ガバナンス機構図と近年行われた改革をまとめた。学校法人の適切な運営、事業の継続性、安定性の向上を狙い、法人改革が行われた。例えば、評議員会の改革として、①特別な事項を除き、諮問機関とし、②学外評議員比率の向上(卒業生評議員6名→8名、学識経験者評議員7名→10名)、③選任方法の変更(教職員らによる選挙で選任の評議員を、有識者による評議員推薦委員会が推薦する候補者を理事会が決定する方式へ)を行った。理事の選挙においても、職務上理事を除き評議員による選挙で選任していた理事について、現理事と評議員が構成する理事推薦委員会で推薦する候補者を、理事会が理事として決定する方式に改め、2018年6月に就任の理事からこの方式で選任された理事が着任した。合わせて監事体制も充実させた。大学内では、①学長選考方法を変更(選挙から選考委員会方式へ)するとともに、②学長の下で共に大学の執行責任を行う副学長、学部長、研究科長の選任も、選挙から指名改革の土台としてのガバナンス改革と教員人事改革方式に変更し、2018年度以降は学長が候補者を指名し、理事会が承認することになった。2014年の学校教育法改正を受け、教授会も学長の諮問機関として位置づけられた。一連の改革で、理事長、理事会と学長の連帯感が強まり、学長付託型の大学運営を実現し、学長のもと、教育研究の一貫した意思決定ラインが形成され、大学改革を迅速かつ適切に展開する環境が整ったと言える。ここに至るまで、特に最初の5年ほどは、学内からの反対もあったという。教授会による運営は民主的だが、時間がかかるし、多くの工学系の教員は政治的なことが好きではない。そこで、「理工系大学のグローバルスタンダードのために改革が必要で、意思決定を早くしなければならない」と話すと大部分の教員は納得してくれた。選挙はある種の人気取りで、終わった後も学内にしこりが残ることを問題視した理事長が学長選挙の廃止を決定し、学長選考委員会が候補を出し、最終的に理事会が決定する方式に変更した。かつては学部長が先に選挙で選ばれて、そのあとに学長が選挙で選ばれていたが、それを学長が先に選ばれて、副学長と学部長を指名する方式にした。以前は行っていた信任投票も現在は行わず、理事会で最終承認する形となっている。こうした一連のガバナンス改革によって、改革スピードが格段に上がったと学長は振り返る。また、教員人事についても変更した。大学組織は人が全てといっても過言でなく、どのような人材を採用するのかは非常に重要だ。まず、それまで72歳だった定年を2001年から段階的に65歳に引き下げた。「学生のことを一生懸命考えてといっても、孫ほどの年齢差ではやはり問題も大きい」と話すが、実際に教員の世代交代も進み、教育研究活動も活性化してきた。かつて教員の採用は学科中心だったが、思リクルート カレッジマネジメント212 / Sep. - Oct. 2018実績目標2013年2017年2023年受入留学生数123人1297人2820人日本人の留学経験者数(単位認定)138人1046人2700人グローバルPBLの数19※※75(海外実施48件、国内実施27件)未定 外国籍教員数7人15人30人外国語による授業数75(学部4、院71)923(学部477、院446)1620学部の女子学生1028人(13.7%)1254人(16.4%)学生数は未定(20%目標)常勤女性教員26人※48人80人常勤女性職員78人 88人90人(注)※2012年、※※2014年図表2 改革の推進特集 進学ブランド力調査 2018

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