カレッジマネジメント212号
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43リクルート カレッジマネジメント212 / Sep. - Oct. 2018まで数値目標を見ておらず、大学全体の学生数の30%をグローバル化するという高い目標に驚き、少し不安にもなったそうであるが、高い目標値を掲げないと努力することもなく、いかにして目標を達成できるか、皆で真剣に考えるきっかけになったという。目標の達成には様々な組織の協力が不可欠になるので、各学科に頼んでグローバル化担当教員をつけた。これは持ち回りではなく、やる気のある先生を選定するよう依頼したという。同時に、TOEIC※の点数・留学生数等、学科別のデータは全て公表した。進んでいる学科と進んでいない学科が浮き彫りになるが、やる気がある人材が担当教員になっているので、さらに切磋琢磨する。そうした意味でも、情報公開は大事だという。確かに芝浦工大では財務情報(収支状況)も学校別だけでなく、学部別に公表しており、驚いた。ここまで公表している大学はほとんどない。悪いことも出して議論し、教職協働でその解決策を探る。このあたりに芝浦工大の強さの秘訣があるのだと見えてきた。これまでの改革の効果について尋ねてみた。SGUも4年目になったが、「予想外、ここまでくると思わなかった」「毎年大学が変わっていくのを感じる」と村上学長は話す。入学する学生もSGU事業開始から2-3年して、少しずつ変わってきたという。以前は留学したくないと話す学生も多かったが、海外に行ってみたい、そういうプログラムにひかれて入学したと話す学生が出てきた。学生だけでなく保護者の意識の変化もある。5、6年前は「留学させて、子どもに苦労させたくない」という雰囲気が多かったが、最近は「どうしたら留学できますか」「いくらかかりますか」と積極的に尋ねてくるようになった。社会全体がそういう雰囲気になっていることの影響かもしれないが、キャンパスを留学生が歩き、学内掲示も英語になっている等の変化を、卒業生である校友からも言われるという。しかし、課題もあるという。現在進めている改革が必ずしも高校に伝わっていないことだ。改革が世の中に浸透するのにタイムラグがあるのは確かだが、進路指導の先生は多忙を極めるため、積極的に宣伝しないとなかなかメッセージが届かない。未だに工業系大学は3K(きつい・汚い・危険)見えてきた効果と課題のイメージが強いらしく、「キャンパスがきれいで驚いた」といった感想を聞くことも多いのだという。こうした課題は多くの工業大学が共通に抱えているため、2017年から4校の工業系大学(愛知工大・大阪工大・広島工大・福岡工大)と一緒に工大サミットを開始したそうだ。今年から東北工大も加わり、6校での共同開催となる。様々なデータを確認すると、工業系大学は教育改革を熱心に行っており、就職率もかなり高い。しかし、イメージがなかなかよくならないのを、大学間で連携・発信してイメージの変容を促し、ひいては日本の工業系大学の国際化を推進し、工学教育の質保証を図るための協力体制を構築するものである。芝浦工業大学では、2027年の100周年に向けて、アジア工科系大学のトップ10に入るという目標を設定した。そのために、「理工学教育日本一」「知と地の創造拠点」「グローバル理工学教育モデル校」「ダイバーシティ推進先進校」「教職協働トップランナー」の5項目からなるCentennial SIT Actionとして宣言した。いわゆる中長期計画のように単なるPLANではなく、必ず執行するものだという強い思いが「Action」という言葉にも表れている。100近い数値データ(KPI: Key Performance Indicator)で工程管理し、目標達成に挑む。真のグローバル大学を目指して、「常に前進する文化の醸成」をモットーに教職学(教員・職員・学生)協働で取り組むという。さらなる発展を楽しみに注視していきたい。100周年に向けたさらなる改革へ(両角 亜希子 東京大学大学院教育学研究科准教授)図表4 Centennial SIT Action特集 進学ブランド力調査 2018 ※「TOEIC® LISTENING AND READING TEST」「TOEIC® SPEAKING AND WRITING TESTS」「TOEIC® SPEAKING TEST」「TOEIC® WRITING TEST」

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