カレッジマネジメント212号
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44立命館アジア太平洋大学(Ritsumeikan Asia Pacic University:以下、APU)は、「自由・平和・ヒューマニティ」「国際相互理解」「アジア太平洋の未来創造」を基本理念に2000年に大分県別府市に開学した比較的新しい大学である。アジア太平洋学部と国際経営学部の2つの学部と、アジア太平洋研究科と経営管理研究科の2つの大学院から構成され、約6000人の在学生の半数が国際学生(留学生)、教員も半数が外国籍であり、開学以来、多文化共生キャンパス、「混ぜる教育」という明確なコンセプトのもとで、これまでの日本の大学にはない新たな取り組みを進めてきた。このようなAPUの実践は、2014年には文部科学省による「スーパーグローバル大学創成支援事業(タイプB)」に採択され、また、2016年には国際経営学部と大学院経営管理研究科がマネジメント教育の国際認証であるAACSB(The Association to Advance Collegiate Schools of Business)の認証を、2018年3月にはアジア太平洋学部観光学分野が国連世界観光機関(UNWTO)の国際認証であるTedQual(Tourism Education Quality)の認証を取得する等、国際水準で高い評価を受けてきた。APUでは、公募によって新たに選出された出口治明学長のもと、さらなるグローバルとダイバーシティを意識した改革が推進されようとしている。APUのこれからについて、出口学長にお話をうかがった。2018年1月に、70歳で経済界から教育界に、APUの学長に転身したことについて、出口学長は、「60歳、還暦でベンチャー企業としてライフネット生命を立ち上げ10年間経営してきたが、若い人が育ってきたので古希で退任した。APUの学長就任は、推薦してくれた人がいたから。APUについては、“面白い大学”というイメージは持っていたが、それ以上のことは知らなかったので漠然としたイメージしかなかった。しかし、学長候補者選考インタビューで初めてキャンパスを訪れたときに、3つの点でこの大学はとてもいい大学だと感じた」と言う。その3つの点とは、1つは、様々な国の学生がキャンパスにいることであり、小さな地球、若者の国連のように感じたことであるという。次に、選考委員会の構成が日本人、外国人、女性と多様であり、ガバナンスにダイバーシティ(多様性)が確保されていたことである。のちにこの選考委員のメンバーに、理事、教員、職員、卒業生が混ざっていたことを知り、また、学長就任後に、国際経営学部とアジア太平洋学部の執行部である学部長・副学部長の9人のメンバーのうち、3人が女性、7人が外国籍であることを知り、ガバナンスやマネジメントにおけるダイバーシティの豊かさに驚いたという。そして、日本企業で、取締役会や指名・報酬委員会でこれだけのダイバーシティが確保された企業はあるだろうかと感じたと話す。第3に、APUでは「APU2030ビジョン」として、2030年に目指す将来像を作っており、「APUは世界に誇れるグローバル・ラーニング・コミュニティを構築し、そこで学んだ人たちが世界を変える」というビジョンのもとで、どのような学生を育てるのかが明確に示されていたことである。SDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))リクルート カレッジマネジメント212 / Sep. - Oct. 2018ベンチャーのような大学として、世界中から注目される尖った大学に出口治明 学長立命館アジア太平洋大学(APU)C A S E2ベンチャー経営者が学長に転身した理由とは

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