カレッジマネジメント212号
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51リクルート カレッジマネジメント212 / Sep. - Oct. 2018法人役員で構成される「教学改革推進委員会」において点検・評価が行われている。そして、同委員会における検討結果は、毎年3月に開催される「全学教員会議」で共有化が図られるのだという。松本学長は、東北学院が今後「鋭さ」を打ち出そうとすれば、TGGVが規定する5領域のうち「社会貢献」、つまり地域社会に有為な人材を供給することが主たる柱になるだろうと述べる。もちろん、東北学院はこれまでにも多くの人材を地域に送り出していて、卒業生18万人のうち半分以上が仙台を含む東北地方で活躍しているという。今後は、地域への愛着やモチベーションを持ち、地域を活性化できる人材の育成に取り組んでいきたいと学長は語る。確かに、東北学院は近年、地域貢献を着実に推進・拡大してきている。冒頭でも触れた災害ボランティアステーションは3.11後、東日本大震災からの復興のハブとして機能し、その貢献が全国的にも注目され、2016年には「大学間連携災害ボランティアネットワーク」の構築へと結実した。さらに、地域人材育成については、2014年に文部科学省COC事業に採択された「地域共生教育による持続的な『ひと』づくり『まち』づくり」と、翌2015年のCOC+事業「みやぎ・せんだい協働教育基盤による地域高度人材の育成」を通して、地域活性化と地域人材の育成が推進されている。また、地域福祉を支えるコミュニティソーシャルワーカー(CSW)のスキルアップを目指す履修証明プログラムも開発・提供されている。それだけではない。東北学院の地域における挑戦は新たな段階に入りつつあることにも注目したい。TGGV150の重点項目にも位置づけられた「アーバンキャンパス構想」がそれだ。東北学院は土樋キャンパス(仙台市青葉区)に加え、泉キャンパス(同市泉区)、多賀城キャンパス(多賀城市)の3キャンパスを抱えるが、5年後の2023年を目途に仙台都心部の五橋地区に新キャンパスを設置する計画だ。教養教育型の総合大学としての魅力を発揮するため、泉と多賀城にそれぞれ置かれた教養学部と工学部を移転させ、伝統ある土樋キャンパスと新設の五橋キャンパスを一キャンパスとして集約していくという。歴史的事業といえる新キャンパス構想に関しては、学内に10の作業部会を設置して広く意見を集約しながら検討を進めてきているという。目指すのは、学都仙台における交流拠点として市民に開かれた都市型キャンパスだ。地下鉄南北線五橋駅の地下コンコースとも直結する予定で、アクセサビリティが格段に向上する。そんな利点を最大限に活かし、これまでに培ってきた地域社会との点と点による関係を、太い線でつないでいきたいと松本学長は期待する。東北学院は今、3.11の試練を経て次なる20年を見据え始めている。留学生数が少ないといったグローバル化対応の遅れ等の課題を抱えてはいるが、もとより地域社会の多文化化が進んでいく時代だ。中期計画を一つひとつ愚直に達成していったその先には、地域に根を下ろし、多元化する地域課題の解決に貢献できる地方大学モデルの姿があるに違いない。(杉本和弘 東北大学高度教養教育・学生支援機構教授)学長・副学長(大学部門)重点項目の策定(法人)企画委員会  企画課大学学長室IR課教学改革推進委員会(学長の重点項目)財務部常務理事会・理事会(事業計画・事業報告)(予算化)学部・研究科各部署中高・榴ヶ岡高校幼稚園特集 進学ブランド力調査 2018 図表3 TGGV150の実施・点検のための組織体制地域に開かれ、地域に貢献する大学へ──アーバンキャンパス構想

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