カレッジマネジメント212号
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54──将来構想部会における議論の目的について改めてお聞かせ下さい。将来の知的基盤社会を支える人材を創る教育の質保証。それが一番重要なテーマだと考えています。今後、高等教育の主な受益者である18歳は減り、進学率もほぼ頭打ち。2040年には18歳人口は88万人程度になると推計されており、現在の約120万人から減少した分の「質」と「量」を、掛け算で埋め合わせなければならないわけです。量、つまり学生数の減少に対してできる具体策の一つはリカレント教育であり、もう一つが留学生の獲得ですが、現状の伸び率を見ると、社会人や留学生を頑張って増やしても不足分の1割も埋まるかどうかという状況。劇的な改革が不可欠です。その際に、抗し切れないのが我が国の財政事情。大学人としては、高等教育への財政投資を増やし知的産物として社会に戻せばよいと考えたいですが、国としては年金や福祉へのサポートを行おうと考えるのは当然のこと。そこで、教育の「質」が課題となるわけです。これからの教育で保証すべき「質」、つまり専門分野を持ち、かつ、広い視野を持った人材の育成を目指そうとすると、一つの大学でできることは限られます。総合大学は可能であっても、小規模大学や単科大学がその要望に応えることは難しいでしょう。そこで今の財務基盤や、個々の大学の規模を凌駕して質の向上を目指すための方策として、連携や統合という案が提示されたわけです。往々にして「経営維持のための連携・統合」というイメージが広まっていますが、連携・統合の真の目的は研究教育の質の向上です。──では教育の「質」は、2040年の社会変化を踏まえどういう方向へ向上させていくべきだとお考えですか。一つは、知の生産におけるインターディシプリナリティー。既存の分野を越えて新しい学問を生み出すという革新をしなければ、大学の本質的な使命を果たすことはできないでしょう。一方、社会においても、分野を超えた力を持つ人同士が協業し、掛け算的に価値を産む必要がある。つまり高等教育機関が育成する人材も社会のニーズに対応して変わらないといけません。学部・学科のあり方やカリキュラムの考え方も、社会との接続を鑑みて大きく変えていく必要があります。リクルート カレッジマネジメント212 / Sep. - Oct. 20182040年に向けた将来構想の行方 Vol.1中央教育審議会大学分科会将来構想部会 部会長・永田恭介氏に聞く世界を支える人材を育てる高等教育機関としての矜持を2017年より中央教育審議会大学分科会将来構想部会が設置され、2040年頃を見据えた高等教育の将来像を描く目的で審議が進められてきた。2017年末に取りまとめられた「今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理」からさらなる議論が進められ、6月には中間まとめが整理された。本部会長である筑波大学学長・永田恭介氏に本議論が目指すものと答申に向けた方向性について聞いた。(聞き手/本誌編集長・小林 浩)個々の大学の規模を凌駕して質の向上を目指すための連携・統合INTERVIEW

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