カレッジマネジメント212号
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56本年6月28日に中央教育審議会大学分科会将来構想部会が、「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ(以下「中間まとめ」という。)」を取りまとめた。今回の高等教育の将来像の審議は、昨年3月の文部科学大臣から中央教育審議会への諮問※1を受け、スタートしたものである。(1)各高等教育機関の機能の強化に向け早急に取り組むべき方策(2)変化への対応や価値の創造等を実現するための学修の質の向上に向けた制度等のあり方(3)今後の高等教育全体の規模も視野に入れた、地域における質の高い高等教育機会の確保のあり方(4)高等教育の改革を支える支援方策のあり方中央教育審議会における高等教育全体や規模に関する政策的な提言は、昭和38年の答申(「大学教育の改善について(昭和38年1月28日中央教育審議会答申)」)を皮切りに5〜10年のスパンで策定されており、近年は、平成17年に「我が国の高等教育の将来像(平成17年1月28日中央教育審議会答申)」が示された。平成17年の当時から18歳人口の減少は始まっており、それに対する高等教育のあり方等の議論が行われていたが、今後、こうした減少に加え、「第4次産業革命」や「Society5.0」の到来による産業・就業構造の変化等が見込まれ、高等教育を取り巻く環境は大幅に変わろうとしている。こうした大きな変化の局面にあって、高等教育機関は、今まで以上に重要な役割を果たしていく必要があり、高等教育機関のあり方自体の大きな構造改革が不可欠である。そこで、2040年を見据えて目指すべき高等教育のあり方やそれを実現するための制度改正の方向性等、高等教育の将来像について、議論が開始された。中央教育審議会大学分科会の下に置かれた将来構想部会(部会長:永田筑波大学学長)で、昨年の5月から22回〔委員懇談会(1回)含む。〕の審議を重ね、議論が深まり、方向性が定まった事項を中心に、現時点の「中間まとめ」として整理した。今回は具体的な方策を中心に取り上げることとしたい。世界や日本社会全体の構造が大きく変化する中で、これからの高等教育は「個々人の強みを最大限に活かすことを可能とする教育」を目指すことが必要であり、そのために、高等教育機関は、今まで以上に「多様な価値観を持つ多様な人材が集まることにより多様な価値が創造される場」=「多様な価値観が集まるキャンパス」となることが求められる。教員の「自前主義(学内出身者を中心とした教育研究体制)」や学生の「18歳中心主義(18歳で入学してくる学生を中心とした教育体制)」から脱却し、学部・学科を越え、大学等をも越えた人的資源をはじめとする様々な資源の共有を通して、「多様な教員」による「多様で質の高い教育プログラム」の提供、「多様な学生」を受け入れられる体制の整備、加えて「多様性を受け止めるガバナンス」のあり方を検討していくことが必要である。■ 多様な教員学外資源の活用という観点から「実務家」や、多様な視点からの教育研究という観点から「若手」、「女性」、「外国籍」等様々な人材が教員として活躍できるような制度等のあり方を検討する。具体的には、実務経験のある教員がカリキュラム改善のプロセスに参画することを促すための制度改正を行う。また、教員経験はなくとも豊富な知識や技術、実務経験を有する人(1)高等教育機関の教育研究体制リクルート カレッジマネジメント212 / Sep. - Oct. 2018「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ」について文部科学省 高等教育局 高等教育企画課長蝦名喜之寄稿

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