カレッジマネジメント212号
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63リクルート カレッジマネジメント212 / Sep. - Oct. 2018告書」や、二次審査で学部によっては課される「自己表現力審査」等、自らの思考を深め、表現するプロセスが盛り込まれている。大学入学後に何をしたいのか、それは自分のどんな背景や経験からくるものなのかを問う。目的意識を高く持ち、自らの進路に主体的な姿勢をとってきたかどうかを見るという。「これまでAOマルデス入試で合格した学生達は、その趣旨の通り、大学でやることを見つけたいのではなく、入学前から何をしたいかが分かっている人、自分のポテンシャルを言語化できる人、目的意識が高く、これまで主体的に活動してきた実績があり、大学でやりたいことを面接でアピールできる人が多い傾向があります。自らの興味関心を軸に高校から大学へ進学しているのです」と平尾入試センター長は話す。そうした学生は必然的に、入学後周囲を牽引する人材となっていくという。ポテンシャルの高い人材を獲得すれば周囲に与える影響が大きいのは当然だが、入学時点のままの差が4年間縮まらないとすれば、教育の介在価値が疑われることにもなりかねない。その点、「成蹊は入学後の教育やサポート体制が充実しているおかげで、4年間トータルで見た場合は差がつきにくい」と平尾入試センター長は言う。有効活用しようとすれば学生に有益なプログラムをたくさん用意しており、そうしたものを活用していけばカタチになりやすいのだという。例えばキャリア教育や1年次から必修のゼミ、選抜制の成蹊国際コースや丸の内ビジネス研修(MBT)等、詳細は紙幅の関係上割愛するが、大学で力を身につけションに設定した学園中期重点目標(2013~2018年)に基づき、Ⅰ.グローバル化の推進 Ⅱ.教育・研究の質の向上 Ⅲ.組織・経営基盤の強化 Ⅳ.産業界・地域との連携の4つのテーマを柱とする改革が推進されている。ここには入試改革に関する文言はないが、結果として大学の教育の軸・基盤を強化し、欲しい人材像、あるべき教育の姿、育成したい人材像が明確に表現されている。成蹊大学でAOマルデス入試の導入を主導したのは、2016年度より学長に就任した北川 浩学長(当時経済学部教授)であったそうだ。主体性と意欲を持った学生を選抜し、入学後に大学が学生に働きかけて多様な経験を積ませることで、「自ら課題を発見し、解決できる人材の育成」を目指している。大学の人材育成方針に合った資質を持つ学生を見分けることが本来の入学者選抜のあり方であろう。2013年度に開設され、今や成蹊大学のキャリア教育の目玉となっているMBTも、成蹊大学の特色を活かした全学部横断型の産学連携人材育成プログラムである。平尾入試センター長は言う。「高校を卒業する若者に対して、どのような素地の学生を選抜して、どのような価値を付加して社会に送り出すのか。大学の存在意義はそこにあると思います。だからこそ、入学者選抜と教育の両面で常に改善改革を続けていく必要があります。本学のAOマルデス入試はきめ細かく入学者を選抜していますが、今後も運用方法を工夫する等、検討を続けていく予定です」。(本誌 鹿島 梓)ていくにあたり、意欲のある学生には多くの機会が与えられる。ただし、最初から全員が開花するわけではなく、教育効果は短期的には測りにくいのもまた事実である。そうした中で、自らの目的意識から初速がついている人材を獲得することは、多様性の確保や周囲への刺激といった意味で意義が大きいという。次に、「多元的な尺度による評価システム」については、「総合的なアドミッションプログラム」である入学準備プログラムと合わせて学部別の詳細を図表に示した。一次審査は全学部書類審査だが、二次審査は学部ごとに評価する能力に即した評価方法を定めている。また、8月のオープンキャンパスでガイダンスを受けてから出願・受験・合格・入学に至るまでの期間、一貫したプログラムが組まれており、合格後は学部独自の入学準備プログラムを受ける。高校から大学への移行がスムーズに行われるように配慮しているという。「多様なアクセスが可能」とは、一般受験のほか、帰国生・社会人・外国人等の特別受験制度を設けて、受け入れ対象を多彩にしている点である。一般受験枠でも現役・既卒の別はない。多様な個を多面的に評価する入試設計に当たり、バックグラウンドの多様性を受け入れる入試にしたかったという意志が表れている。現在成蹊大学では、「自ら課題を発見し解決できる人材の育成」をミッ学部ごとに定めた評価プロセスと入学準備プログラム学園中期重点目標による教育改革

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