カレッジマネジメント212号
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65韓国では根強い首都圏志向による地方の人材流出もあり、地方大学の質低下や地方大学出身者の就職難が問題とされ、歴代政権においても「地方大学革新力量強化事業」や「教育力向上事業」等地方大学の改革を推進する政策が進められてきた。前政権では、地方大学の活性化と地方における人材育成のための基本計画として「地方大学育成方案」が2013年に立案され、翌年には地方の大学を主たる対象とする競争的資金事業「大学特性化事業(CK: University for Creative Korea)」が開始された。本事業では、支援が特定の地域、大学、分野に偏らないよう配慮され、国内の均衡発展が狙いとされている。さらに、韓国政府は定員未充足に苦しむ地方大学の解決策の一つとして留学生受入れの促進が必要であるとの認識から、2014年、地方大学育成委員会で、5年間に地方大学へ留学生を3万人誘致するという計画を発表した。そして先の「大学特性化事業」において、留学生誘致を目的とする3つのプログラムを立ち上げ、いずれにも誘致の目標人数を設定した。そのうちの一つである「地域先導大学育成プログラム」では、留学生誘致のノウハウを持つリーダー格の大学を中心に地域の5校程度がコンソーシアムを構成し、留学生のリクルーティングや留学生受入体制の整備に取り組む。それによって、地域の大学が共に発展することを目指すもので、全国各地で6つのコンソーシアムが採択された。コンソーシアムは国立と私立の両方の大学を含むが、なかには留学生受入れに関する問題から新規受入れの制限(ビザ発給制限)措置を受けた大学も含まれていた。過去に問題のあった大学であってもコンソーシアムの一員として近隣の優れた大学と情報を共有して支えあうことで問題を克服し、目標達成に向けて事業を推進するという仕掛けである。また、留学生が在籍していない大学でもコンソーシアムの一員として、独自の強みや特徴を生かし、留学生教育プログラムの改善に寄与する形で参加するといった大学も見られた。それまでの競争的資金事業では、地域のトップ大学にノウハウや資金が集中して周囲の大学には行き渡らず、地方大学が停滞する一因ともなったが、「地域先導大学育成プログラム」では、上述のように地域ぐるみ地方大学と留学生受入れの発展が意図されている。大学が廃校になることで在学生や地域に与える負の影響を考えれば、このような大学間連携によって底上げをする施策は、日本でも検討されるべきではないだろうか。韓国における外国人留学生誘致政策は、海外留学する韓国人の圧倒的な多さに比べ、外国人留学生の受入れ数が少なかった※3ことから生じた大幅な教育貿易収支の赤字(2478百万米ドル、2004年)を契機としてスタートした。韓国政府が2004年に留学生誘致拡大計画「Study Korea Project」を開始した後、国内大学ランキングの国際化指標に留学生数が含まれたことや留学生は定員外で受入れられることもあって、大学の留学生受入れ数は急増し、目標の5万人を予定より2年早く2008年に達成した。しかし、受入体制が十分整わないまま急激な量的拡大を行った結果、留学生の不適応や不法滞在、反韓感情といったひずみが生じ、海外での韓国高等教育の評判悪化につながった。韓国政府は大学の留学生誘致と受入れの質を向上させる必要に迫られ、「外国人留学生誘致・管理力量認証制(IEQAS: International Education Quality Assurance System)」(以下、認証制)を2011年の試行実施を経て翌年より本格導入した。認証制は留学生の適切な誘致と支援体制の整備を大学に促すことを意図し、留学生受入れ状況の良好な大学には認証というお墨付きを与えながら、問題のある大学に対しては大学名を公表の上、ビザ発給制限によって1年間の新規留学生受入れを制限する措置を課した。韓国政府は、このような留学生受入れの質を向上させる制度を導入するとともに、2012年には20万人の留学生受入れ目標数を掲げた「Study Korea 2020 Project」を新たに発表し、質と量の両方を追求する方針を打ち出した(後に目標達成年は2020年から2023年に延期)。認証制の導入後は、韓国語能力の高い留学生の増加や留学生の不法滞在率改善といった一定の効果が見られた。ただし、大学の認証取得が任意であったこと、お墨付き(認証)のインセンティブ効果が薄かったこと、認証制の知名度が国外で低く留学生募集には特にプラスにならなかったこと、大規模校では認証制が求める多くの指標への対応に時間がかかったこともあって、認証校の増加は緩やかな量と質を追求する外国人留学生政策リクルート カレッジマネジメント212 / Sep. - Oct. 2018
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