カレッジマネジメント212号
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66リクルート カレッジマネジメント212 / Sep. - Oct. 2018ものであった。また、中国の未登録留学エージェントを通じた質の伴わない留学生の一括大量誘致が問題となったことから、認証制では一つの国からの留学生比率が全体の95%を超えないように制限する指標が当初含まれていた。しかし、これが大学の留学生募集に少なからぬ負の影響を及ぼすこととなった。中国1カ国からの誘致に過度に依存していた大学をはじめ、多様な国々からの留学生募集にまで至らない大学では留学生数が減少したことから、認証制導入後3年間、韓国全体の留学生数は停滞する結果となった。事態の打開を図るため、韓国政府は語学力の条件緩和、並びに不法滞在率1%以下の認証を受けた大学の留学生にはビザ発給審査の簡素化やアルバイト許可時間の延長等の対策を取ったこともあって、留学生数は再び増加に転じ、2016年には留学生数が10万人に達した。韓流人気、韓国語能力試験(TOPIK)の実施国拡大(2017年現在74カ国)、韓国語教育機関「世宗学堂」の設置国拡大、在外同胞のための韓国語教育機関である「韓国教育院」の留学生誘致センターとしての指定等も、留学生の誘致の追い風となった。さらに、留学生誘致先の多様化を図るためアフリカや中東での韓国留学フェア開催、アセアンからの留学生に地方大学の理工系学部を体験させる「ASEAN優秀理工系大学生地方大学招請・研修事業」、欧米等先進国20カ国を重点国とする交換留学生対象の韓国政府奨学金の支給、認証された大学の大学院課程留学生を対象とした電子ビザの導入等、各種施策が次々に展開されている。認証制については、2016年に名称を「教育国際化力量認証制」と改め、第2期がスタートした。第1期では、大学の留学生受入れ体制を整備することに主眼が置かれていたが、第2期では「国際化力量が優れた大学を『認証』することにより、高等教育機関の質保証及び優秀な外国人留学生の誘致拡大」を目的とする旨、認証制の便覧に明記され、受入体制の整った大学における留学生受入れの拡大が明確に打ち出された。また、韓国政府は、留学生の場合、韓国人学生よりも教育と生活支援のコストがかかることを勘案し、留学生の授業料は先述した「大学授業料値上げ上限制」の対象外とすることを2016年に決定した。これにより、大学が自主的に留学生の授業料を決めることができるようになったことから、ソウルの大規模私立大学では、留学生の授業料を3〜8%程度引き上げる動きが広まっている。入学金廃止と授業料抑制により大学はますます財源確保に窮しており、今出典:e国指標(http://www.index.go.kr/main.do)データより筆者作成図1 外国人留学生数、韓国人海外留学生数、及び教育貿易収支推移(韓国)050,000100,000150,000200,000250,000300,0002016年2015年2014年2013年2012年2011年2010年2009年2008年2007年2006年2005年2004年2003年01,0002,0003,0004,0005,0006,000 (百万米$) (人)外国人留学生数韓国人海外留学生数教育貿易収支赤字額
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