カレッジマネジメント212号
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68リクルート カレッジマネジメント212 / Sep. - Oct. 2018大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングといった座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索するなか、様々な取り組み事例を積極的に紹介していきたい。今回は、全国23府県市と連携協定を結んで地方出身者のUIターン就職をサポートする神奈川大学で、兼子良夫学長にお話をうかがった。地元地域のニーズに応えつつ、戦前から地方入試を行って全国から学生を受け入れてきた歴史がその背景にはあった。神奈川大学の特性は、創立の地である横浜と密接に関わっている。兼子良夫学長は「勤労青年や地方出身者に対するケアを中核として、京浜工業地帯の人材育成を担ってきた。日本の近代化・国際化の窓口という土地柄、グローバル人材育成のDNAもある。『横浜の大学』として地域に貢献してきました」と語る。「本学は、京浜工業地帯に働く人が地元で学べる夜間部を持つ専門学校として、90年前にスタートしました。創立者の米田吉盛先生自身が地方出身で苦学したことから、学費を全額免除し生活費も支給する給費生制度、仙台や福岡などでの地方入試を実施。貿易科では語学教育として英語で授業をしていました」。戦前に築かれたこれらの骨格は、二部(夜間課程)や給費生制度が形を変えながら続くなど、戦後に新制大学になってからも受け継がれた。1965年には、貿易学科から独立する形で外国語学部を開設した。このとき英語英文学科と並んで設置されたスペイン語学科は、貿易商務にスペイン語を使う横浜の地域人材ニーズに応えるものであると同時に、グローバル人材育成でもあった。「開設以来4000人以上の卒業生を出しており、世界各国で活躍しています」。キャリア教育について兼子学長は、「専門的、技術的なものよりも、『学問』を通して『考える力』を身につけることが大切」と言う。「一般に、学問とは、過去の知識の中から自らの課題を発見し、その課題を解決するために、地道な調査や研究を神奈川大学全教員が担当する初年次教育「ファーストイヤーセミナー」で、学びて問うことと考える力を身につける兼子良夫 学長『横浜の大学』として地域人材のニーズに対応キャリア教育は、「学問」を通して「考える力」を身につけること

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