カレッジマネジメント212号
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69リクルート カレッジマネジメント212 / Sep. - Oct. 2018行い、一つの仮説を提示、検証し、自らの新しい学説を提示することとされています」。学者が、自由に課題を発見し、仮説を提示し、独自の結論を出す。よって、同じ科目名の授業においても、結論が違うことはいくらでもある。さらに、「学問では、知識をただ学び取ることだけでなく、文字通り、学びて問う、学びかつそれに疑問を持ち、その真偽を自ら主体的に問いかけて、自ら考えていくことが求められます」。それが高校までの「勉強」を超えた大学の「学問」だと兼子学長は言う。「学問にきちんと取り組むことは、課題を見つけ、検証し、解決することをそのままパッケージで学ぶこと。これは、何が問題なのだろうとか、どう考えていけばいいだろう、というときの具体的な学びの思考サイクルと物事を相対化して「考える力」を学生が身につけることにつながります。この「考える力」が、キャリア教育の根幹であり、社会に出たとき一番ものをいう力になると考えています」。「学問」こそキャリア教育という考え方から、神奈川大学では、入口の1年生からキャリア教育を行い、出口の時点で必要なものを4年間で身につけるようにしている。大学教育の入口と出口、教学と就職支援とが一体であるという意識の延長線上には、高大接続があり初年次教育がある。「87の高等学校と神奈川県立総合教育センターが加盟している高大連もとより神奈川大学では、下宿生が4割を超えるなど、地方出身者が多い。「全国から人が集まるのは、教育プログラムを超えて人間形成に良い影響を及ぼすと我々は認識しています。例えば、学生は、九州の人と北海道の人がゼミで一緒になったのが衝撃だったと言う。OBからも、良かったという声しかない。従って、留学生を増やすといった国際交流も大事ですが、日本においても多くの地域から人を呼ぶのはとても大事だと思っています」。戦前からある地方入試を現在、全国20会場(横浜を含む)で実施、100以上の支部をもつ本学OB会・宮陵(きゅうりょう)会にも、学生募集への協力を呼びかけている。「ただ今は、少子化で一人っ子が多くなっているので、地元に戻って欲しいと希望する親御さんが多い。自治体の方々も、地方創生の担い手として、一人でも多くの人材を地元に戻したい。全国型大規模大学の責務として、地方出身者の地方回帰も視野に入れなくてはならない」。営業戦略ともいえる施策の一つが自治体との協定とい携協議会で、高校と大学を接続するような正式な授業を大学で開講してほしいと、高校の先生方の強い要請がありました。それを受けて、我々大学としても正課でどのようなことが必要かと検討し、ファーストイヤーセミナー(FYS)という初年次教育を2006年に始めました」。1年次前期の必修で、図書館の利用の仕方、授業の受け方、レポートの書き方など、「大学流の読み書き算盤」を教える。「勉強から学問へ進化すること、先生の言葉通りのレポートを出しても0点、正答は一つではない、ということも、きっちり教える」(兼子学長)。このFYSは専任教員が担当する。「新入生がどんな学生なのかを知ることになり、また、全教員が新入生に直接かかわることになる意味は大きく、教員の学習にもなっています」。キャリア支援の施策としては、自治体との就職支援連携協定の充実が際立つ。締結済みと学内手続中を合わせて23件に及ぶ。入口〜出口の結びつき、初年次教育FYS自治体との連携や各地OB会との連携を強化

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