カレッジマネジメント212号
70/82

70リクルート カレッジマネジメント212 / Sep. - Oct. 2018うわけだ。「各県の東京事務所が毎月情報を提供してくれ、学生の相談にも乗ってくれる。学生は安心ですよね」。公的な情報ルートのほか、卒業生からの情報も重要だ。「例えば私のゼミ生で、有名大手企業に受かったにも拘わらず、地元企業に就職した学生がいました。理由を聞いたら、本学の先輩方が生き生きと活躍している。また、働き方をはじめとする詳細な企業情報が入っていたのです。今の学生は、大手企業だから行くというステレオタイプではない、多様性に基づいた選択をする。それに対応するためにも、しっかり地方の情報も提供するということです」。ただし、それだけ手厚くしてもまだ、「本当は地方に帰りたいが、帰れない」実態もあるという。本人が決めても親が反対するケースも少なくない。「地元に帰ってくるなら公務員か教員または金融機関、そうでなかったら東京で有名企業に行ってほしいという親御さんもおられる」と兼子学長は言い、「地方にも立派な会社があると我々は知っているのですが」と残念がる。「山形県米沢の商工会議所では、会頭が本学のOBですが、親御さんをバスで中小企業の現場に連れて行くといった努力をされています。地方の企業に対する情報をより丁寧に提供することで、『経営姿勢が立派』『大企業と同様に福利厚生もしっかりしている』『工場も近代的で将来性がある』と認識が改まる。こういう試みをモデルケースとして広めるなど、地方の就職には卒業生団体である宮陵会を含めオール神大で対応していきます」。神奈川大学は2021年4月にみなとみらい(横浜市西区)に新キャンパスの開設を予定しており、外国語学部と2020年新設の国際日本学部(設置構想中)が横浜キャンパス(横浜市神奈川区)から、経営学部が湘南ひらつかキャンパス(平塚市)から移転する。さらに2023年には理学部が湘南ひらつかキャンパスから横浜キャンパスに移動。学部教育は横浜市内の2キャンパスに再編される。経営学部は国際経営学部になり(名称変更構想中)、みなとみらいキャンパスは留学支援や英語教育のプログラムを強化して、グローバル人材育成の中核にしていくという。兼子学長は「新キャンパスには、横浜駅から歩いて通ってほしいと思っている」と言う。横浜駅から日産グローバル本社のビル内歩道を通り、資生堂のグローバル研究拠点の前を歩いて、キャンパスに至るみなとみらい地区は、「世界標準を常に感じる場所」だからだ。「みなとみらいは、特別な教育プログラムといっていいほどの素晴らしい教育環境にあります。グローバルなビジネスが動いていることを直接感じながら通学することなどもその一例です。みなとみらいにほど近い桜木町で開学したグローバル人材育成のDNAを受け継ぎ、新たな世界標準の人材育成に尽力することが、最先端の国際企業が立地するみなとみらい中央地区にキャンパスを打ち出す意義だと思っています」。キャンパス再編のもう一つの意味は、「神奈川大学が、学びたいことは文理を超えて何でも学べる横浜の総合大学になること」と言う。「今でも学部間の垣根は低く、他学部の単位を取得できますが、横浜と平塚では距離があって難しい。ようやく行ったり来たりできる距離になり、全学部が近接することで、より先進的な研究と教育が可能となります」。未来社会を見据えた人材の育成には、学部ごとの学士課程教育の充実を基盤として、学際的取り組みや、連携と融合がより必要になってくる。その第一歩として、まず本学が最重要としてきた教養教育を再構成することで、重層的できめ細かな新しい教養教育を目指すという。授業は両キャンパスで行うことになるので、全学生がみなとみらいキャンパスの講義を受講可能となり、「世界を感じて考える」効果も期待される。「大学は、未来社会を見据えて、先進的に社会を先導する必要があります。未来社会を先導する研究と教育とは何か、全学部が、みなとみらいと横浜六角橋という新しい立地とその環境を生かすべく、大きな視野で、研究組織、教育組織、そして教育プログラムを充実・強化のために再検討していく。それが本学の高等教育機関としての責務を永続的に全うし、世界標準の良識ある人材育成につながっていくと思います」。世界のビジネスを体感する、みなとみらいキャンパス(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)

元のページ  ../index.html#70

このブックを見る