カレッジマネジメント213号
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10リクルート カレッジマネジメント213 / Nov. - Dec. 2018本誌をご覧になっている多くの大学関係者は、高校学習指導要領が改訂されたからといって大学教育にはあまり関係ない、大学入試が高校教育を左右することはあっても高校教育が大学のあり方に影響を及ぼすことはないと思っておられるかもしれない。私事で恐縮だが、1970年生まれで1985年度に高校に入学した私は、第一学年の年度途中に、当時の共通一次試験から「現代社会」と「理科Ⅰ」が試験科目から外れると決まった途端、同級生が共通必履修科目であるにも拘わらずこの2つの科目を全く勉強しなくなったことを克明に覚えている。高校教育が大学入試に振り回されることは私自身の高校時代の原体験である。それから33年。大学にとって黙っていても受験生が集まり、50万人「受験難民」時代等と言われた1986年から1992年の「ゴールデンセブン」(佐藤龍子「大学「ゴールデンセブンの時代」と臨時的定員政策を考える」『社会科学』(78号、2007年))を経て、1993年からの18歳人口の急速な減少に加え、1992年までの18歳人口の急増に対応するための臨時的定員の5割の恒常定員化により、大学・短大進学率は37.6%(1985年)から57.9%(2018年)へ、大学進学率は26.5%(同)から53.3%(同)へと急上昇した。その結果、専門高校は別として、その質の保証を大学入試に依存してきた普通科高校の学びの質と量に深刻な事態が生じている。例えば、高校生の半分が普通科文系、大学生の半分が人文・社会科学系学部に属し、この「ホワイトカラー養成コース」の少なくない学生が高校2年以降理数科目をほとんど学ばずに、英語、国語、地歴・公民の3教科の多肢選択式問題に対応すべく知識の暗記・再生や暗記した解法パターンの適用に追われている。事実的知識を文脈に関係なく多肢選択式で問う入試に対応するためには、高校は教科固有の見方・考え方を働かせて考え抜く学びよりも知識再生型の反復学習を重視せざるを得ない。他方、入学者選抜で学力を問わない大学の存在が、高校生の学びのインセンティブの底を抜けさせているため、偏差値45-55のボリュームゾーンの高校生の学校外の学習時間はゴールデンセブンの1990年の水準から大きく低下し回復していない。今、高校学習指導要領改訂や「大学入学共通テスト」と「学びの基礎診断」の導入等の高大接続改革が一体的に行われている背景の一つには、この状況に対する強い危機感がある。そして、この一体改革で、高校は本気で変わり始めている。このうねりを大学がしっかり受け止め、大学教育を変革できるかに、我が国におけるK-16教育(幼児教育から高等教育)の質的転換の成否がかかっている。だからといって、この一体改革は我が国固有の経緯や人口動態のみを理由に行われているわけではない。経済協力開発機構(OECD)は、教育の質的転換が加盟国各未来社会で求められる資質・能力と教育改革の国際的動向文部科学省初等中等教育局財務課長合田哲雄動き始めた高校教育改革を前に、今大学に問われているもの新学習指導要領 変更の目的とポイント「ゴールデンセブン」から高大接続改革への33年新学習指導要領

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