カレッジマネジメント213号
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15リクルート カレッジマネジメント213 / Nov. - Dec. 2018学びと評価が一体となった高校教育の質的転換が始動している。本誌198号(2016年)の拙稿では、福岡県立城南高校の「ドリカムプラン」、京都市立堀川高校の「探究科」、千葉県立姉崎高校の「マルチベーシック」といった先駆的な高校教育改革の最前線を紹介したが、これ以外でも優れた取り組みは枚挙に暇がなく、生徒の3分の2が理系を選択し、スーパーサイエンスハイスクールにも指定されている長崎県立長崎西高校では、生物部の生徒が60年ぶりに新種のアメンボを発見し、本年5月に研究成果が国際学術誌に掲載された。島前三島をまるごと学校の舞台とし、離島初のスーパーグローバルハイスクールに指定された島根県立隠岐島前高校は、地元の生徒と全国から島留学(県外募集)で集まった多様な生徒が協働しながら、離島という特性を生かした地域課題解決型学習を行うとともにブータンやロシア、シンガポールとの国際交流等を通じて、グローカルな学びを重ねている。このような個々の高校の取り組みは、「点」の段階から、長野県や北海道等のように校長会や高校教育経営研究会等の組織を軸に「面」の段階へと進化しつつある。語彙を表現に活かす、数学を日常生活に活かして考える、観察・実験の結果をめぐって科学的に考え議論する、歴史を因果関係で捉えて考える-本来、我が国の学校教育のお家芸とも言えるこのような教育活動こそが、AI時代にあって人間としての強みを発揮するうえで不可欠な学びであり、「大学入学共通テスト」や「学びの基礎診断」においてもこのような学びの厚みを評価することとしている。これらの動きに共通する軸が各教科に関する専門性であり、教職の原点であるこの専門性が高校教育改革の「面」の段階への進化を支えている。さらに、林芳正文部科学大臣(当時)は、本年6月5日に「点」から「面」へと進化する高校教育改革今大学に問われていること政策ビジョン「Society 5.0に向けた人材育成」を公表した。そのなかで高校教育改革は大きなテーマとなっており、政府の教育再生実行会議でも議論がスタートしている。その際、重視されていることの一つは、AIは数式(数学)であり、そのエンジニアには物理学が求められる等、STEAM教育(理数、アート)の重要性が増しているなか、我が国において高校から大学にかけて文系・理系に分かれているという文理分断を脱却することである。前述の通り、「ホワイトカラー養成コース」の少なくない学生の高校2年以降理数科目をほとんど履修していないという学びは、未来社会においてリスクの高い学びだと言わざるを得ない。入試で数学を課すという早稲田大学政治経済学部の英断もこのような文脈でより深く理解できる。高校における文理分断の脱却は普通科高校のあり方を大きく変えるものであり、当然、大学入試や学士課程の専攻分野のポートフォリオ等大学のあり方も問われることになる。他方、長野県飯田市では牧野光朗市長の強いリーダーシップのもと、長野県飯田OIDE長姫高校、松本大学、飯田市の三者によるパートナーシップ協定を締結し、地域人教育を通じて地域の良さを学んだり、コミュニティーを支える意欲や能力を育てたりすることに取り組んでいる。高校生になったら地元や地域と切り離されるのではなく、地方創生の核として、生徒が「やりたいこと」を見つけられる高校への転換も重要であり、文部科学省としてもこのような高校を支援し、「地域科」の創設等の手段も含めて横展開を支えたいと考えている。この文脈においても大学をはじめとした地域の高等教育機関は、どのような役割を担うのかが問われている。未来社会を見据えて動き始めた高校教育改革から「学びのリレー」のバトンを受け継ぐ大学の構想力が問われている。中央教育審議会大学分科会で審議されているガバナンスやファンディング、教学等に関する改革ツールは、この構想力を発揮し、実現するための具体的な手立てだと考えている。特集未来の学生を育む高校の改革
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