カレッジマネジメント213号
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16リクルート カレッジマネジメント213 / Nov. - Dec. 2018「高校入試はどう変わりつつあるか」という点でまず取り上げるべきは、大学入試における英語の4技能評価を高校入試レベルで大胆に実施した大阪府の例だろう。昨年春から英語に関しては、外部テストのスコアを入試得点に換算して英語の入試得点とするか、英語の新タイプの入試問題(従来型を4技能評価に近づけたもの)を受験してこの得点を英語の得点とするか、得点の高いほうが採用される方式で、注目すべきはその外部テスト利用者が全体で1%に満たなかったが、公立トップクラスの文理学科設置10校がその64%を占めている、ということだ※1。その大阪府の他教科の入試についてはどうだったか。この点について以下に文京学院大学・清水公男教授に分析を示して頂いたのでご紹介したい※2。いずれも、問題文は難しくなく、各設問も普段の授業時に習ったことをベースに、論理的な思考力が問われているが、合科型・科目型の出題が増える傾向にある。・国語作文の新傾向として。自分の主張をデータ等で裏付けるものには合科型・科目型の出題傾向が見られる。・数学統計的な思考を必要とする「資料の整理」の問題で、やはり合科型・科目型の出題である。・理科計算問題は減少気味であるが、特定の事象の原因を考察し、記述する問題が増加している。面白いのは、受験生が初めて目にする状況を設定し、必要な情報を与えて問題を解かせる「活用型問題」の出題である。普段の授業(実験)のなかで、「なぜその現象が起こるのか」について、暗記でなく理解する力を問う問題となっている。・社会問われている知識は授業の範囲内であるが、問題文の量が増え、しかも情報をきちんと読みとる力が問われている。グラフを読み解くには割合や縮尺等、小学校レベルの計算力が必要とされる。清水教授によれば、従来型(「習得型」と呼ぶ)に加え、高校入試問題には10年前(特に2012年以降)より思考力、判断力、表現力を問う活用型の出題がなされてきたという。この活用型は、以下の3タイプにさらに分析される※3。1.教科型:各教科・科目における知識・技能をそれぞれの文脈で適切に活用できるかを問う問題2.合教科・科目型:社会のグラフや資料読み取り問題で数学の知識を必要とする問題等3.総合型:環境の問題に関して、具体例を挙げながら環境問題と自分自身の関わりについて、自分の考えを書かせる問題。出題傾向としては、推薦入試には上記3型が多かったが、1型と2型の出題も増えている。実際、全国の公立高校入試問題にはこうした活用型の注目問題が出されており※4、国語では、会話形式の出題は増加傾向で、哲学や科学をテーマにした文章が多く出題されている。社会では、グラフや資料は年々増加傾向。一部、英語ではグラフや資料の読み取りは定番、記述は(株)森上教育研究所森上展安学びの質で選抜する中学・高校の入試の現状合科型・科目型の出題が増える入試●PROFILE1953年生まれ。早稲田大学法学部卒業。東京第一法律事務所勤務を経て都内で学習塾「ぶQ」を経営後、88年に株式会社森上教育研究所(http://www.morigami.co.jp/)を設立した。中学受験、中高一貫の中等教育分野を対象とする調査・コンサルティング、講演、執筆等を行う。中学・高校入試

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