カレッジマネジメント213号
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32リクルート カレッジマネジメント213 / Nov. - Dec. 2018生活や普段の状況を演じながら葛藤を感じとる経験も取り入れられている。2年生になると、社会そのものに出て考える段階に入る。例えば、「あびこ探検」は文字通り、地元のあびこの街に出てフィールドワークを行う授業だ。2・3学期には沖縄に修学旅行に行くのに合わせ、沖縄の歴史・文化・経済について調べ、民泊も経験しながら現地の人達にインタビューを実施することで、当事者と関わりながら学びを深めていくのだという。そして3年生では、2045年問題(シンギュラリティ)、起業、環境といったテーマを切り口に、将来実生活の中でどのようなことができるかを考えていく。このように、「探究ナビ」は同校の掲げる「新たな学び」を具現化したものだ。教科の壁を越えた学びを通して自らを見つめ、他者や社会とつながることは、21世紀を生きる生徒にとって得難い経験となるに違いない。ただ、教科横断型であるが故に、「探究ナビ」のマネジメントには特有の難しさが付きまとうことも事実だ。そもそも、数名で一学年を担当する他の一般教科に比べ、「探究ナビ」では2名の教員が一クラスを受け持つ等担当教員が多く配置されている。学校全体でみれば教員の半数以上が関わっているが、そうして教員が増えれば、ちょっとした打ち合せをするにも事前調整が必要になる。さらに、府立高校である以上教員異動は避けられず、教科横断型授業の経験が少ない教員が配置され、それがひいては教員間の意識差や温度差を生み出してしまうこともある。慣れない教員達を巻き込んでいく仕掛けが必要になる。だからこそ、生徒側に立って実際の授業を経験してもらう研修会を開催しているほか、複数クラスで授業の進度が揃うよう、同じ教材やパワーポイントを準備する等の授業運営の工夫も重ねてきた。しかし本質的な課題は、教員同士が「教科横断型の学びを語るための共通言語を持たないこと」だと、教科主任の酒井教諭は指摘する。「探究ナビ」を担当する教員には当然専門教科以外の内容を教えることが求められるが、例狙い:自らの進路を切り拓くことができる人材の育成探究ナビⅠ(1年生)探究ナビⅡ(2年生)探究ナビⅢ(3年生)学年テーマ人とつながる社会とつながる未来を拓く学習の到達目標さまざまな事柄・出来事などに積極的に興味をもち、気付いた(発見)疑問・不思議に対しての解決意欲を掻き立て、解決してゆく姿勢(探究)を身に付ける。その研究・学習結果に満足し、あるいは一層の学習を深めることで、新たな結果を獲得することの驚き・喜びを感じる(感動)など、肯定的なスパイラルに巻き込まれていることを実感でき、新たな発見を求め自信をもって次の課題にチャレンジしてゆく姿勢を獲得できる。さまざまな事柄・出来事などに興味をもち、積極的に関わり、その課題に気付き(発見)、アンケートやインタビュー、文献研究やネット検索など計画的に調査を深め(探究)、新たな結果を獲得することで、新たな事象を発見する(感動)。研究結果を多面的・多角的に分析し、共同して整理、推測することで、発表(発信)する。周囲に影響を与えるとともに、新たな発見を求め、自信をもって次の課題にチャレンジしていく。「起業」「2045年問題」についての基礎知識を理解し、さまざまな事柄・出来事など興味をもったテーマについて(発見)多方面からの検証方法を考え、調査・研究し、論題を決定する。望ましい解決方法を目指し、文献、ネットなどを元に、レポートとしてまとめ(探究)最適な発信方法を考えてプレゼンテーションを行う。さらに将来を展望し、建設的に創造力を発揮し、周囲を巻き込んでいくことを実感でき(感動)、社会の一員としての自覚を深め、将来への自信をもって社会人基礎力を身に付ける。評価の観点〇 観る力、聴く力〇 自分を変える力〇 表現する力〇 協働する力〇 気付き・感じる力〇 多面的・多角的に考える力〇 関わる力〇 計画する力〇 協働する力〇 企画する力〇 望ましい解決をめざす力〇 発信する力〇 進路を切り拓く力主なプログラム● クラス開き● 表現できる場作り● 適性検査を利用した自己理解● コミュニケーション(1対1/1対複数/協働性を育む など)● 自然史博物館学芸員による講義● 仕事調べ● 演劇プログラム など● あびこ探検(地域フィールドワーク)● 適性検査を活用した「自分探し」● 探究スキルの学習(インタビュー/アンケート作り/資料活用)● 分野別グループ活動(フィールドワーク/調べ学習/発表) など● 起業を考える(個人)● 2045年問題を考える(指導主事による講義/まとめ発表)● 起業をテーマにした課題研究(グループ)など図2 「探究ナビ」の全体像教科横断型授業を成功させるための仕掛けづくり

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