カレッジマネジメント213号
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34岡山県立和気閑谷高等学校(以下、和気閑谷高校)は、岡山県東部の和気郡和気町に立地し、江戸時代初期、1670年に岡山藩により開設された日本最古の庶民を対象とした学校である閑谷学校に淵源を持つ。地方の伝統校である一方で、2011年にはユネスコ憲章に基づいて平和活動・国際活動を行う学校としてユネスコスクールの認定を受け、2014年度から、総合的な学習の時間を活用して、地域の行政や商工会、地域おこし協力隊等の協力をもとに生徒が地域課題に取り組む探究学習を「閑谷學」として展開する等、高校での新たな学びの具体化を積極的に進めている。「閑谷學」を中心とする「和気閑谷高校魅力化プロジェクト」は、2017年度に文部科学省・経済産業省による第7回キャリア教育推進連携表彰において最優秀賞を受賞した。2013年から校長として同校の教育改革を主導する香山真一校長に、これらの取り組みの特徴と高大接続改革の中で大学教育に期待することをうかがった。和気閑谷高校は、普通科とキャリア探求科の2学科からなる、生徒数341名の小規模校である。キャリア探求科は商業科をベースとして2005年に設置されたものであり、総「生徒を主体的に学びに向かわせる」という課題に向き合う合系と商業系の2つのコースが置かれている。岡山県の県立高校は1学年4学級が維持されてきたが、和気閑谷高校は3年前に1学年3学級(普通科2学級、キャリア探求科1学級)となり、県内で最も小規模な県立高校となった。同校は、県庁所在地である岡山市内から山陽本線を兵庫方面に電車で約30分の場所に立地し、県内東端にある高校である。岡山市内とその周辺地域に偏差値的序列において上位の進学校が立地している。県内東部で駅からも離れた地域に住む地理的条件が不利な生徒や、県外の大学への進学までは考えていないという生徒等、多様な生徒を受け入れており、卒業後の進路状況は、4年制大学、短大・専門学校、就職がほぼ1/3ずつである。地方の小規模な公立の進路多様校として、一般的な高校のイメージと重なる。「普通科の進学希望者であっても、どの大学に行きたいかを決めているわけではない。全国的な状況として大学の入口が広がっている中で、難関大学を目指さなければ大学はどこかに入れる。景気も回復してきたので就職もできる。選ばなければ進学先も、就職先もある中で、生徒を主体的に学びに向かわせるのはどうすればよいか」と、香山校長は赴任した2013年当時の生徒の様子と課題を振り返る。リクルート カレッジマネジメント213 / Nov. - Dec. 2018地域課題に取り組む「閑谷學」や目標準拠型の教育により主体的に学びに向かう力を育てる香こうやま山真一 校長学校所在地:岡山県和気郡和気町進路状況:大学26人、短期大学9人、専門学校35人、就職37人、 その他2人 (2018年3月卒業実績)DATA岡山県立和わ気け閑しず谷たに高等学校CASE3日本最古の庶民を対象とした郷校「閑谷学校」に淵源

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