カレッジマネジメント213号
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35この課題は「学力の三要素」のうち、3番目の「自主的に学びに向かう力や人間性をどのように育てるか」につながるものであると香山校長は捉えた。そこで、生徒の人間性を育成するために閑谷学校の伝統である漢学を活かすことを考えた。和気閑谷高校では、2000年に、創立330年を記念して、独自の副読本として『論語百章』を編纂し、始業式や終業式等の学校行事ではその一章を全員で朗誦する取り組みを行っていたが、その機会は年間で5、6回しかなかった。そこで、校内に「論語掲示板」を設置するとともに、生徒用のスケジュール帳として「論語手帳」を作り、それらに週替わりで論語の一節を示すとともに、各学級で授業前にその一節を「今週の論語」として毎日朗誦することにした。「このことで、3年生くらいになると自分の好きな論語を語れるようになり、人間性の陶冶がなされる。論語を通じて、生徒の自己指導力が高まってきている」と香山校長は話す。閑谷学校から続く建学の精神に基づいた教育であり、公立学校では珍しい取り組みである。しかし、本質的な課題は、授業や学習への意欲である。4年制大学へ進学を希望する生徒に対しては、センター試験・一般入試を目指して教えることができる。しかし、そうでない生徒には目標設定が難しい。そこで最初に取り組んだことは、香山校長が「授業の額縁」と呼ぶ、①教科に拘わらず、授業ごともしくは単元ごとに「授業の目標」を生徒と共有するようにし、②それから「学習の手順」を説明する。そして、③生徒が到達できたかを振り返る、という3つ主体的に学びに向かう力をどう育てるか:「論語」「ポートフォリオ」「ルーブリック」の項目で授業の様式を揃えることである。この時、授業の目標は、知識として理解する「分かる」ことだけでなく、「〜することができる」として、何ができるようになるかコンピテンシーとして示すことを各教員に求めた。あわせて、子どもたちが成長を自覚する仕掛けとして、ポートフォリオ評価とルーブリックに基づく目標準拠評価(図1)を取り入れた。ポートフォリオは、山梨大学の堀哲夫教授の提案する一枚ポートフォリオを参考に、単元ごとにA4の用紙1枚を用いて、各回の授業を受ける前に自分の知っている知識や概念を書き、授業を受けた後に自分の学んだことや感想を書くものである。自分の成長を言語化することで、どんな力が身についたのかを自覚させることを意図したものであり、教師がその状況を毎回、確認している。「一枚ポートフォリオを用いることで、自己肯定感が低く、学びに向かう力が弱い生徒でも、自分に身についたことと成長を自覚することができる。自分の成長をメタ認知することで自律的に学びに向かっていくことにつながる」と香山校長はその意義を説明する。現在、このポートフォリオを、全ての授業、また部活等のあらゆる教育活動の中に導入することを進めているという。例えば、学期末の3者懇談では、生徒自身が教員と保護者に対して学期の目標と振り返りを口頭で説明する、口頭ポートフォリオを取り入れている。これは、このことが「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、あらゆる教育活動の柱となると位置づけているためである。さらに、目標準拠評価として、各教科の単元ごとに、ルーブリック(図2)の作成と導入を進めた。ルーブリックにリクルート カレッジマネジメント213 / Nov. - Dec. 2018特集未来の学生を育む高校の改革図1 和気閑谷高校のルーブリック(例)次の3点で今学期(1学期)の評点とした。①パフォーマンス課題に対する評価(30%)②毎授業のノート評価+その他の課題(30%)③定期考査による評価(40%)評 価発表時の審査(採点)の観点と基準Ⅰ声の大きさ楽に聞こえる321聞き取りにくい図の指示図を示しながら321図を示さないⅡ前者からのつながりつながりがある321つながりがないⅢ内容の正確さキーワードが組み込まれている321キーワードがないⅣ目線聞き手の反応を見ながら321聞き手を見ないⅤ充分な説明よく説明され分かりやすい321説明不足でわからない図2 目標準拠評価の考え方目標準拠評価***観点4 全部できる3 3/4できる2 2/4できる1 1/4できる0 全くできない小計 ××点ペーパーテスト点 計50点パフォーマンス点 計50点基礎的な知識・技能思考力判断力表現力等主体的に学習に取り組む態度▶
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